三洋電機〝崩壊〟の裏でゴールドマン・サックスがやったこと 『週刊朝日』 Part3

三洋が「金融機関支配」になった一昨年春、一人の大物元代議士が、水面下で三洋電機の救済に動いていた。〝塩爺〟こと塩川正十郎元財務大臣である。塩川氏が振り返る。

「三洋の組合OBから、『松下電器と一緒になって、太田工場の職員を守りたい』と言われたのです。三洋の井植(敏)さんとは、僕の息子が養子にいった先と縁戚です。地元ですから三洋とも松下とも下請けから後援会におって親しくしてる。それで森下君(洋一、パナソニック相談役)に相談したんです。『真剣に聞いておきます』ということでした。西川さん(善文、日本郵政社長)にも言うと、『雇用の問題は大事です』という答えでした」

ところが、この提案は三井住友出身の前田副社長に一蹴される。

「前田さんも自分の判断じゃないと思いますよ。三社の相談でしょう。最も切り売りしたがったのはGSですよ。解体して食っちまうと。まさにハゲタカなんです。三洋は、ノキアから資本を入れれば生きると思ったんですがね。私はただ雇用を守りたい、社会不安を避けたいという一心でした・・・」(塩川)

この時、三洋の社長になったのは人事畑の佐野精一郎である。佐野体制が行った経営改革は、「カンパニー制の廃止」「携帯電話事業の京セラへの売却」などで、翌年には「四期ぶりの最終黒字」と喧伝された。しかし三洋関係者は首を傾げる。

「黒字になったのは、2005年から野中・敏雅体制で1000人規模のリストラをして、カンパニー制の無駄を見直した結果です。純利益が11倍と言ってますが携帯事業の売却益です。彼らが打ち出した経営改善計画は、旧体制とそっくり同じ。しかも、金融機関主導で売却することが決まっていた半導体子会社はいまだに売れず、赤字を垂れ流してる始末です」

佐野社長はパナソニックに子会社化される中で何をしたのか。実は「何もしてない」らしい。

「本社から徒歩数分の健保会館の前に黒塗りの車を停めたまま、週に1、2回は夕方から深夜1時頃まで組合OBと麻雀をして、土日も組合関係者とゴルフをしてます。佐野社長は人事畑なので事業が分からない。将来のリストラ対策で組合を抑えるのが唯一の仕事ですからね」(三洋幹部)

金融3社に、「情報リークや業務を妨害したのではないか」と聞くと、「主力行として三洋電機の発展に資する施策に資金面・人材面で支援を行ってきたものであり、業務遂行を妨害する筈もない」(三井住友銀行広報部)、「会社の人事や業務内容について故意の情報リークなどによって会社の業務遂行を妨害した事実はございません」(大和SMBC経営企画部広報課)、「三洋電機に対する経営妨害や情報漏えい、野中氏に対する言動に関しましては事実無根であります」(GS広報部)と、一様に否定する。

しかし、パナソニックのTOB(株式公開買付)に応じれば、金融機関には約1000億円ものキャピタルゲインが入る。一方、三洋は正社員、非正規雇用を問わず、大規模なリストラを発表している。

かつて元会長の井植敏は、不採算事業やファミリー企業を整理する時、旧住友銀行から債権放棄などで助けられてきた。時価の4分の1以下の70円という破格の転換価格で3000億円もの増資を決断した敏は、金融機関を妄信し過ぎたのではないか。何度も芦屋の井植の邸宅を訪れ、手紙も投函したが、返事は無かった。

ウォールストリート流の金融資本主義は世界不況の震源地になった。GSの持田が日本企業に断行した直接投資の多くも、〝失敗〟に終わろうとしている。そして、GS日本法人も、昨年十一月に大規模なリストラを余儀なくされた。持田の腹心と言われた幹部バンカーも一人、二人とGSを去っている。それでも持田は、六本木ヒルズ46階の社長室に居座り続けている・・・。


初出:三洋電機〝崩壊〟の裏で蠢いた金融機関の「権謀術数」『週刊朝日』2009年2月27日号


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