NHKスペシャルが持ち上げた〝病院再建屋〟が倒産雲隠れ『FRIDAY』

〈26歳で病院の事務長を務めた後、巨大な病院グループの幹部として全国に病院を開設した経歴を持つ。その後、35歳で独立・・・現在、顧問をつとめる病院はおよそ30カ所。経営建て直しにも数多く取り組んできた───〉

NHKの看板番組「NHKスペシャル」が、『病院再建の内幕』と題した93年1月13日放映分でこう持ち上げた人物が、忽然とその姿を消してしまった。「日本病院サービス」社長の脇隆治氏(48)。病院経営コンサルタント、病院再建屋として、NHKをはじめ、数多くのマスコミにもてはやされた人物である。

脇氏が経営する「日本病院サービス」に経営危機説が囁かれ出したのは、今年4月頃。本誌が入手した当時の内部資料によるると、同社が約20億円もの約束手形を乱発して全く回収のメドが立っておらず、あまつさえ暴力団系企業から1億円を借り入れるという状態に陥っていたことが分かる。

「今年の春頃から、脇は病院内のイントラネット構築を名目に、コンピュータ部品の販売を始めたのです。ところが、実際は手形で購入した部品を叩き売って、現金化していただけのようでした」(同社元社員)

この話の通りなら、〝取り込み詐欺〟であり、刑事事件の可能性すら出てきてしまう。自転車操業となった「日本病院サービス」は、11月に約30億円の負債を抱えて事実上倒産。そして脇氏は、債権者の追及を逃れるために、無責任にも雲隠れしてしまったのである。

かつて、脇氏と共同経営をしたことがある医師が怒りをぶつける。

「とにかく弁が立つ男で、医師会や厚生省に顔が利くと吹聴していた。この言葉に医者や医療機器メーカーが簡単に乗せられて、脇の会社にカネを注ぎ込んだあげく、回収不能となってしまったのです。我々も勉強不足でしたが、あれだけマスコミに取り上げられ、脇もそれを意図的に宣伝に使ってましたから、皆つい信用してしまうんですよ」

冒頭で取り上げたNHKスペシャルは脇氏に格好の宣伝材料を提供してしまったのである。番組では、脇氏が東京・足立区にある総合病院の再建に悪戦苦闘する姿がドキュメンタリーとして取り上げられているのだが、

「何が『再建』なもんですか。NHKは、脇さんを以前から実績のあるプロのように紹介しましたが、実際に脇さんが経営全般のコンサルタントをしたのは、この病院が最初で最後だったはずです。しかも、人工透析機で診療報酬を稼ぎ、起死回生を狙うという戦略も虚しく、結局、放映から1年足らずで、職員にボーナスを支払うことが出来ず、事実上、経営権を手放したのです。つまり、彼がやったことは、高額医療機器の斡旋に過ぎなかったんです」(同病院の元幹部職員)

こんな人物を「好意的」に報道してしまったことに対し、NHKは、

「番組は、あくまでも病院の経営危機という社会問題を扱ったもので、その事例としてこの病院を取り上げたのです。たまたま経営陣の中で脇さんが中心的な役割をしていただけで、宣伝にはなっていません」(瓜林裕治広報室副部長)

という。しかし、脇氏を「再建屋ではなく病院利権屋」と評する声が、この番組放映前から根強かったのも事実である。多くの「被害者」が出た以上、その正体を見抜けずに持ち上げた責任も重いのではないだろうか。


初出:NHKスペシャルが持ち上げた〝病院再建屋〟が倒産雲隠れ『FRIDAY』1996年12月20日号


追記:本稿で取り上げた脇隆治というのは実にふざけた男だった。93年に脇が発起人となって「日本民間病院事業協同組合」なる組織を設立しようとしていた。その発表資料に、「週刊現代記者」として何の承諾もなく筆者の氏名を使ったのである。この時、脇にも他の発起人となった医師たちにもまったく面識はなかった。脇の取り巻きの一人で自称ライターの「遠藤隆」という男が、たまたまパーティの席上で筆者と名刺交換をしており、これを勝手に使ったのだ。遠藤に文句を言ったが、梨の礫だった。筆者はこの時点から、脇はマスメディアを巧妙に使って病院を舞台に商売をする「詐欺師」のようなものだと認識していた。