日本長期信用銀行国有化後の千昌夫『FRIDAY』


〝歌う借金王〟こと千昌夫(51)が、埼玉・戸田競艇場のイベントホールで行われた「千昌夫歌謡ショー」で、久しぶりにファンの前に姿を現した。

「私、1レースは4-5だと思うんです。これで借金を返そうと思ってます」

と、自分自身への巨額融資が「焦げ付い」た日本長期信用銀行が破綻、国有化され、公的資金の投入という事態に陥ったことなど目もくれず、借金ギャグを連発し、観客の爆笑を誘っていた。しかし、この日、ステージに立った千の体形は、ご覧の通りの太り過ぎの二重アゴ。大汗をかきながら、ペットボトルを片手に歌う姿には、哀れさすら漂う。しかも、『北国の春』を歌っても、サビの「ふるさとへ帰ろかな・・・」と盛り上がる高音部分で、声がかすれてしまう。ブランクが長かったためか、高音が出ない。ブランクが長かったためか、自分の代表曲すらきちんと歌えなくなっているのだ。

それでもホールに詰めかけた約3000人の客からは拍手。千も気をよくしていたようなのだが・・・。実は、この日会場を埋めた客は、モーターボート・レースのためにやってきた「ギャンブラー」たち。千は、わずか100円の入場料だけで、レースのついでに見物されるステージで歌っていたのだ。

「最盛期には、一晩のディナーショーだけで約800万円も売り上げていた千さんにとっては、屈辱的なステージでしょうね。ただ、こういう『ドサ回り』は、手っ取り早い現金収入になるんです。この日も、2~300万円ほどのギャラは貰ったと思いますよ」(芸能プロ社長)

千が「屈辱的」な思いをしてまで舞台に立った理由は、むろん借金返済だ。自らが代表をつとめる「アベインターナショナル」が、ハワイや香港、オーストラリアのホテルを次々に買収、都心にも50ヶ所もの賃貸マンションを抱えて、「資産3000億円の不動産王」ともてはやされたのは8年前のこと。だが、バブル崩壊後は、呆気なく「負債総額2500億円の借金王」に転落した。

「海外物件などを処分して、現在では負債を1000億円余りにまで減らしたようです。ところが、ピーク時に長銀と系列のノンバンクから受けた約280億円もの融資は、なぜか返済が滞っているようなんです」(都市銀行・幹部)

この言葉通り、長銀グループが担保に取っている、仙台のゴルフ場「MILIA 1000 SENDAI」や、横浜市の約600坪の大豪邸などは、いまだに千所有のままで、処分の目処すら立っていない。同じく長銀の担保に入っているハワイ・マウイ島の「ウェスティン・マウイホテル」も、今年7月末にようやく売却が成立したばかりなのだ。

「これまでは、不良債権の額が大きいほど、他の金融機関への影響が大きいため、長銀側の『破産』など手続きが取り難かった。しかし、長銀が国有化され、今後は千さんに破産などの法的措置がとられる可能性が高まった。彼も休んでいる暇はないでしょうね」(前出・都銀幹部)

このところ、「アマンダ夫人、4人の子供とハワイでのんびり暮らしていた」(知人)という千が、急にステージに復帰したのは、こんな理由があったのだろう。回収の見込みもないカネを無分別に貸し続けた長銀と、カネを返そうともしない悪質な借り手。なんとか日銭を稼いでいる千は、彼らに比べればまだ同情すべき存在なのかもしれない。


初出:長銀潰れて千昌夫は「北国の春」を歌えなくなった『FRIDAY』1998年11月20日