大石寺が手に入れた「8億円豪邸」の使い道『FRIDAY』

東急大井町線の等々木駅から徒歩で5分、東京・世田谷でも屈指の高級住宅街の一角に、この白亜の豪邸がそびえ立っている。

敷地面積は863㎡、床面積は307㎡に及ぶ。しかも、23区内では唯一の等々木渓谷に面しているので、鬱蒼と生い茂る木々や眼下を流れる谷沢川への眺望が、都心では考えられない絶景であることは間違いない。この大豪邸の「事実上の所有者」が、創価学会との激しい宗門争いを繰り広げている日蓮正宗総本山「大石寺」の阿部日顕法主(72)ではないかとといれわているのだ。

そもそもの発端は、昨年6月、東京都に届いた匿名の陳情書。それによると、この不動産は一昨年12月に、前の所有者から都内の不動産会社に売買されたとして、東京都に届けが出されている。ところが、「本当の所有者は大石寺で、国土法違反の疑いがある」といのうである。これを受けて東京都都市計画局では事実調査をしたものの、「不動産会社からは、『民間の通常の取引である』との回答しか得られず、当方としても、それ以上の実態は分かりませんでした」という。

現在、表札や不動産登記簿には、元の所有者の個人名があるだけで、大石寺や日顕法主の名前は見当たらない。しかし本誌は、大石寺が事実上の取引者であり、後に土地・建物が大石寺に「譲渡」されることを明確に裏付ける3通の領収書のコピーを入手した。先の不動産会社が大石寺にあてて発行したものである。

3通は一昨年12月から昨年3月にかけて発行されており、それぞれの金額を合計すると6億1150万円になる。発行元の不動産会社に領収書のコピーを示すと、本物であることを認めた上でこう説明した。

「大石寺から融資を受けて、その資金でこの土地・建物を購入しました。売買価格は6億3000万円で、改修費用が1億4000万円。手数料を加えると8億円以上になります」

写真の領収書には、「別紙業務協定書に基づく金銭消費貸借契約書」とある。その「業務協定書」には、この取引は、この土地・建物の所有者と、購入した不動産業者、それに大石寺の三者が結んだもので、大石寺から融資を受けた不動産業者がその資金で所有権を取得した上で、「後に大石寺に譲渡する」と、明確に書かれているという。大手の不動産業者が指摘する。

「いわゆる『覆面買い』です。本来の購入者が売買契約をせず、第三者への融資を通して不動産を手に入れるやり方です。そうすれば、契約時には国土法の届け出の必要もないし、登記にも名前が出ない。どうしても名前を出したくない買い主が使う不動産購入の常套手段です」(前出・周辺の不動産業者)

なぜ大石寺側は、堂々と売買契約を結ばず、このような手続きをしたのか。実は、この家が宗教活動に使うためではなく、日顕法主が住むための「個人用の住宅」だからではないのか。

「今回、問題の家の購入に奔走したのは、日顕法主の側近中の側近といわれる理事の一人です。また家の作りも、宗教施設というより個人宅的な要素が強いといわれている。日顕法主が〝東京別宅〟か〝隠居所〟として使おうとしたことは間違いありません」(日蓮正宗関係者)

4年前にも、日顕法主は東京・目黒20億円の豪邸を買おうとして、「公私混同」「贅沢」等と報じられ、計画が頓挫したと伝えられたことがあった。その失敗を教訓に極秘裏に進めるつもりだっただのだろうか。大石寺側は、「不動産の購入など聞いたこともありませんので、ノーコメントです」というだけ。

建築関係者によれば、豪邸は改装工事も終わって新居同然に生まれ変わり、いつでも入居できる状態という。宗門戦争のなかで、常に攻撃の的となる日顕法主、穏やかな〝隠居生活〟を送るには、まだまだ時間がかかりそうだ。


初出:大石寺が手に入れた「8億円豪邸」の使い道『FRIDAY』1995年2月24日号


追記:宗教問題については、興味がないのでほとんど取材経験がない。たまたま売買関連の資料を入手したので記事にしたものである。記事が出た後、この不動産取引については創価学会側が大石寺批判の材料に使ったようだが、あまり良く知らない。言うまでもないが、筆者は創価学会とも大石寺とも無関係であり、他の宗教もまったく信じていない。