金融恐慌下で荒稼ぎするモラルなき金融マンの手口と実名『週刊朝日』Part2

「ある会社の上場審査の際、アーバンとの取引が問題になって、東証の担当者から『アーバンとの取引をゼロにしろ』と言われた。アーバンは東証一部に上場しているのに・・」(大手証券会社の幹部)

さらに銀行は、アーバンの息の根を止めにかかる。

「4月以降は、我々が保有物件を売ろうとすると、相手先企業への融資も出なくなったのです。邦銀は全て拒否なので、外資に頼らざるを得なくなった。ゴールドマン・サックス(GS)、モルガン・スタンレーは門前払いでしたが、メリルリンチは物件を簿価の4分の1程度で買ってくれた」(前出・アーバン関係者)

こうして、日本の金融界から締め出されてボロボロになったアーバンに食いついたのが、フランスの大手金融機関のBNPパリバの川端だった。

BNPが手掛けた新株予約権付転換社債の割当の中には、株価が下がるほど割当側が儲かる「MSCB」と酷似したスキームも含まれる。リーマン・ブラザーズをへて、06年にBNPに転じた川端は、顧客にこんなことを吹聴していたという。

「日本にMSCBを根付かせたのは私です。リーマン時代には、ライブドアのニッポン放送買収時のMSCBも担当した」

05年のライブドアのMSCB発行では、リーマンがライブドア株の空売りで数百億円の利益を上げたと言われた。川端の発言は事実なのか。リーマンを買収した野村證券は「個別の社員についてはお答えできません」(広報部)というだけである。エリックの発言は単なるハッタリで、有名ディールをネタに自分を売り込んでいたに過ぎないというのが真相だろう。

6月26日、アーバンは、〝MSCB商人〟の川端が主導するBNPを引受先に、転換社債を発行して、300億円を調達したと発表した。ところが、一ヶ月半後に経営破綻をした際、実際は92億円しか手にしていなかったことが判明する。

「社債発行と同時に、株価が一定の価格を下回ると払い込みを停止出来る『スワップ契約』だったことを公表していなかった。しかも大量保有報告書によると、BNPは子会社を通じて、5月からアーバン株の空売りをしていたようで、インサイダー取引も疑われる」(企業法務に詳しい弁護士)

なぜ、投資家を欺くような発表をしたのか。アーバンの関係者が言う。

「BNP側から、『スワップ契約を公表するな』と言われたからです。これについては、顧問弁護士やTOB(株式の公開買付)で当社の買収を計画していたメリルリンチからも、『公開すべきだ』と強く言われました。しかし、BNPの資金が必要だったので無視してしまった」

BNPの管理統括本部の村田邦博に、川端の発言内容や所在を聞いたが、「従業員個人の情報及び個別の業務に関わるご質問であり、弊社からは公表しておりません。アーバンの転換社債に関しては、第三者委員会にて検討しており、現時点でのコメントは差し控えさせていただきます」と答えるだけだった。

一方、アーバンで交渉を担当したのは副社長の川上陸司である。川上は、旧日本長期信用銀行出身で、米系コンサルティングファームのA・T・カーニーに在籍していた。〝密約〟が株価の暴落リスクを高め、投資家を騙すことに気づかないわけがない。そして、みずほ銀行で「アーバン潰し」を主導した小崎とは、旧興銀、長銀時代から企画畑(MOF担)として昵懇の間柄だった。

「プロのバンカーたちが寄ってたかってアーバンの株主を食い潰した」--。これが、この「事件」の実態ではないのか・・・。

しかし、アーバンが破綻した時点では、日経平均株価は1万3000円台を維持していた。個人投資家が「食い潰される」のは2ヵ月後である。


初出:金融恐慌下で荒稼ぎするモラルなき金融マンの手口と実名『週刊朝日』2008年10月31日号


金融恐慌下で荒稼ぎするモラルなき金融マンの手口と実名 『週刊朝日』Part1
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