業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part1


東京都心の内幸町にある新生銀行の本社ビル。5月下旬、行内のいたるところに掲示されていた「あるポスター」が、密かに一斉撤去された。新生銀行の中堅行員が言う。

「昨年の春頃から、『企業イメージの向上』という理由で、杉山淳二会長とティエリー・ポルテ社長の二人が並んだ写真を、行員やお客さんの目のつく場所に何十枚も貼っていたのです。杉山の会長退任が決まった直後に何も言わずに外されました。会長と社長の仲が悪いのは、行員なら誰でも知っていたのですから、とんだ茶番劇ですよ」(新生銀行幹部)

新生銀行はアプラスなど傘下の消費者金融会社の経営悪化に加え、サブプライムローン関連投資の損失計上で、株価が最盛期の半値にまで落ち込んだ。5月14日、杉山が退任し、前会長の八城政基が再び会長に復帰する異例の人事を発表したことで、逆にマーケットからは「経営危機が本格化した」と評価される始末だ。

そして、「経営危機を招いた元凶」と指摘されているのが、米国人トップのティエリー・ポルテ社長である。

「サラ金(消費者金融)問題やサブプラなど、外部環境の悪化は単なる引き金に過ぎません。リテール(個人向け)部門で儲けるのか、投資銀行業務に特化するのか、明確な戦略も示さず、19階の社長室で怒鳴り声を上げているだけのポルテ社長に嫌気がさしている。行内では『ポルテを解任しないと駄目だ』という意見で、日本人も外国人も一致してます」(新生幹部)

新生銀行内部で繰り広げられる、日本政府と日本人を馬鹿にした、「経営トップと大株主の横暴」の実態を浮き彫りにする。

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新生銀行は、一時国有化された旧長銀を、リップルウッドと、元ゴールドマン・サックス(GS)のパートナー(共同経営者)のクリストファー・フラワーズを中心とした投資ファンドが買収して誕生した。4年前に東証1部へに再上場し、振込手数料無料、24時間ATM手数料無料などで、専門紙の「お客様満足度」でトップになり、「銀行再建のモデルケース」とまで称揚されていた。

しかし一昨年6月に八城が銀行を去り、三和銀行の元副頭取でアプラス社長だった杉山が会長、モルガン・スタンレー・ジャパンの元社長で、大株主のフラワーズのハーバード時代の同級生のポルテが社長の体制になってから、新生の経営に危険信号が灯り始める。株価が急落し、昨年3月決算で、609億円の赤字に転落してしまった。原因は、買収した消費者金融やビジネスローン会社の経営悪化だ。

「サラ金買収の旗振り役は、フラワーズとポルテで、GEコンシューマー・ファイナンスからロバート・ルートンをスカウトしたのです。ところが、買収は出来ても経営立て直しは出来なかった」(アプラス幹部)

そもそも消費者金融の経営危機は、過去に遡って「過払い利息」の返還を認めた、法治国家とは思えない最高裁判決が原因だ。しかし、市場環境の変化に応じて金儲けの仕組みを変えるのが、金融のプロのはずである。

「フラワーズは『他のサラ金を買収しろ』などと言ってるようですが、もう金がない。増資した500億円は、そのままアプラスの資本増強に消えました。『新生銀行がレイク買収』と報じられましたが、考えられませんよ」(同)

消費者金融を収益の柱にしようとしていた目論見が外れると、他の部門でも歯車が狂い始めた。IB部門の元行員が語る。

「不動産を中心とした証券化ビジネスがフル回転で稼がなければならなくなった。パチンコの証券化で穴を空け、不動産関連のローン債券の保有比率が上がった。一方、M&Aなどは、外資や日本の証券会社に太刀打ちできない。ソフトバンクの携帯電話ビジネスの証券化のアレンジャーの末席に座っただけで、『ついにソフトバンクと取引が出来た』と大喜びしてる始末です」(新生幹部)

そして、振込手数料無料も、今年7月には「月1回」に限定された。そこで、ポルテが推進したのが「ブランドイメージを向上させる」という戦略(?)だった。

「広告会社やコンサルタント会社を雇って、『ブランディングを推進する』と言ってポスターを作ったわけです」

そのポスターが、杉山の退任決定後に撤去された、「杉山・ポルテ」が並ぶポスターだった。しかし、モノクロ写真の中で笑顔で並ぶ二人は、「19階の冷戦」を演じていた。

「二人の部屋は19階の役員フロアにあるのですが、互いに行き来しない。ポルテは絶対に人前で日本語を話さず、杉山さんも、国内で企画畑なので英語は堪能じゃない。役員会でも、会長と社長が通訳をつけている状態でした。言葉が通じないので、口喧嘩にすらならなかったのが不幸中の幸いです」(同)

もっとも、トップ同士のいがみ合いは、どの会社でも珍しくない。問題は、ポルテの決断がことごとく裏目に出たことだ。

「ブランディングは効果がありませんでした。預金口座が、『220万口座突破』と発表しましたが、内部資料では、実は『残高ゼロの口座』が70万口座もあるのです。口座維持手数料が無料なので、莫大なコストがかかっています。一方、モルスタ時代の部下で営業マン出身の日本人をプライベートバンク部門のトップに雇いましたが、成果が上がらない。そもそも、ブランドイメージだけで大金を預けたり、仕事を依頼してくれるほど、お客さんは甘くない」(新生銀行幹部)

そして、大株主のフラワーズと、社長のポルテの身勝手な人材登用と戦略に嫌気がさして、新生を後にしたのは旧長銀出身者ではなく、他の外資系投資銀行などからスカウトされた「外人部隊」だった。法人部門の幹部が言う。

「ポルテは部店長会議などでも、顔を伏せて紙に書いた文書を読むだけで、自分の言葉で語らない。全社員に送られるメールも、MBAの教科書などで見たような文言ばかり。逆境で頑張ろうという情熱が感じられません」(新生幹部)

こうして、サラ金、リテール、投資銀行部門の全てが瓦解し始めている。


初出:業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』2008年7月4日号


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