業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part3

実は、ポルテを切れない理由がもう一つある。それは、「次期社長候補がいない」からだ。長銀出身のベテラン行員が言う。

「本来なら旧長銀出身者をトップに据えるのが収まりがいい。ところが、有能な人間は既に外資などに転職してしまった。金融法人の担当の加藤正純と事業法人担当の富井順三が、副社長になりますが、外資から招致された幹部と比べると実績が無い。他の日本人では、杉山会長が連れてきた三和出身の寺井宏隆専務は、役員会で『リテール部門は簡単に利益が出ない。10年後を見越してプロジェクトを作るべきだ!』とトップに直言するほどの情熱家でしたが、杉山会長と一緒に退任してしまいます・・・」

では、招致部隊の外国人が社長になればいいのではないか。候補として上がっているのは、サンホー・ソン、クラーク・グラニンジャーの二人だ。しかし、「二期連続で外国人トップは難しい」という見方も根強い。

「昨年8月に日本政府が筆頭株主になった時、サンホーが金融庁に挨拶に行った。すると、『なぜ、あなた(のような韓国人)が来るんだ』という応対をされたそうです。行政側が差別的な態度では、有能な人間があえて火中の栗を拾おうとはしない」(新生銀幹部)

そして、TOBで筆頭株主になったフラワーズ自身も迷走している。

業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part2

昨年8月、優先株が普通株に転換され、日本政府が新生銀行の筆頭株主となった。この頃から大株主のフラワーズが、頻繁に来日するようになる。

「フラワーズは、政府の支配が強まって、自分の意に沿わない取締役を送り込まれることを恐れたのです。いずれ新生を売却する時にも、筆頭株主でないと不利です。サブプラ危機で株価が下がったので、TOB(株式公開買付)での買い増しを決断した」(新生幹部)

このフラワーズの決断は、投資家として当たり前の行動だろう。しかし、筆頭株主でありながら地位が低下することを指をくわえて見ていた日本政府は、あまりにも無策だった。

「昨年11月にTOBの実施を発表した時、金融庁の検査が新生に入っていたのです。検査官は何も知らされずに激怒したようです。金融庁と交渉をしていた杉山会長と船山範雄執行役の二人も立場を失いましたが、後の祭りです。フラワーズは、大株主である国や金融庁を何とも思ってないのでしょう」(旧長銀OB)

そして、日本人を最大級に愚弄したのが、内幸町の「本店ビル売却」である。

新生は、金融早期健全化法によって、日本国が出資している資本注入銀行である。2年連続で早期健全化計画の3割が未達成になると、経営者は引責辞任しなければならない。税金によって救済された民間銀行である以上、このような厳しい罰則が適用されるのは、当然である。

業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part1


東京都心の内幸町にある新生銀行の本社ビル。5月下旬、行内のいたるところに掲示されていた「あるポスター」が、密かに一斉撤去された。新生銀行の中堅行員が言う。

「昨年の春頃から、『企業イメージの向上』という理由で、杉山淳二会長とティエリー・ポルテ社長の二人が並んだ写真を、行員やお客さんの目のつく場所に何十枚も貼っていたのです。杉山の会長退任が決まった直後に何も言わずに外されました。会長と社長の仲が悪いのは、行員なら誰でも知っていたのですから、とんだ茶番劇ですよ」(新生銀行幹部)

新生銀行はアプラスなど傘下の消費者金融会社の経営悪化に加え、サブプライムローン関連投資の損失計上で、株価が最盛期の半値にまで落ち込んだ。5月14日、杉山が退任し、前会長の八城政基が再び会長に復帰する異例の人事を発表したことで、逆にマーケットからは「経営危機が本格化した」と評価される始末だ。

そして、「経営危機を招いた元凶」と指摘されているのが、米国人トップのティエリー・ポルテ社長である。

外資が笑う「日興コーディアル事件」全真相『週刊新潮』Part3

先に触れた通り、ベル社がソフトバンクから500億円で買収したBBCは、実績の無い会社だった。敢えて、互いの利益のためにBBCという〝毒饅頭〟を作り、日興とベル社が喰らいついた格好である。解毒の方法は、「BBCを500億円の価値がある会社に変える」以外にない。

ところがBBCは、さらに「不可解」な会社に変質していったた。

まず、初年度の決算公告が存在しない。ベル社の広報担当者は、「会社の方針で何も公表できない」という。しかし、資本金五億円以上の会社は商法により損益計算書と貸借対照表の公告が義務付けられている。

「事業立ち上げで多忙で、失念しました。申し訳ありません」(ベル社広報グループの武智智子)

明らかな商法違反である。これが、五百億円もの価値がある企業と言えるだろうか。

翌年、BBCはようやく平成18年2月末の決算公告を出す。これによると、経常利益は約28億円に過ぎないが、特別利益が130億円もあるのだ。その一方、固定資産は30億円足らずである。この数字から推定されるのは、「BBCは保有資産を売却している」ということだ。さらに驚くのは、2年前の買収直前に資本金を51億円に増資したにも関わらず、昨年6月に資本金を1億円に減資し、資本準備金も49億円から4億円に減らしているのだ。

外資が笑う「日興コーディアル事件」全真相『週刊新潮』 Part2

この日に決まった業務提携は、ベル社がソフトバンクの子会社のコールセンター会社「BBコール(BBC)」を500億円で買収し、592億円の設備投資をする。さらにヤフーBBや日本テレコムのコールセンター業務を一括してBBコールに委託するという内容だ。

当時の両社のニュースリリースには、BBCを「設立2000年8月29日、資本金51億円、事業内容コールセンター運営業務」と記されている。しかし、この記述は「巧妙な嘘」と言わざるを得ない。

BBCは、提携が決まった7月20日に、旧東京めたりっく通信の子会社で休眠状態になっていた「東京めたりっく販売」を社名変更し、同時に資本金を1億円から51億円に増資し、約款を「コールセンターの運営」を書き換えただけの会社だ。M&Aの実務に詳しい弁護士は次のように言う。

「売主、買主、そして仲介者の三者、さらに出資者元の日興を加えた全ての人間が、互いに『大人の事情』を理解したから出来上がったディールでしょう。しかし、上場企業が関わるM&Aとしては『スレスレ』と言わざるを得ない」

もっともソフトバンクは、大手の会計士事務所から、BBCの将来価値を算出したフェアネス・オピニオン・レター(第三者の意見書)もとっていた。

外資が笑う「日興コーディアル事件」全真相『週刊新潮』Part1


平成16年7月27日、東京地裁民事第8部。

丸テーブルを囲み、裁判官に、訴訟の当事者や弁護士が主張を行う非公開の「審尋」の席で、ソフトバンク社長の孫正義が強い口調で語った。

「我が国の国際競争力を支える通信インフラにコールセンターは不可欠だ。これほど有望がビジネスが認められなければ、日本に大きな損失になる」

この時、コールセンター大手のベルシステム24(ベル社)は、ソフトバンクと手掛ける新ビジネスのために、約1042億円の増資を計画していた。一方、ベル社の筆頭株主のCSKは、「一部の経営陣が株主の支配権を逃れるための増資だ」として、増資の差止請求訴訟を起こし、争っていたのだ。

「ベル社側の参考人として証言した孫さんの発言が効果的だった。裁判所の判断がベル有利に傾いた」(審尋に関わった人物)

サブプライムで「花形外資バンカー」は難民と化した 『週刊新潮』 Part3

この事件の中心人物とされる「齋藤栄功」は、花形外資バンカーのスタイルを虚飾で装った男で、その転落ぶりは際立っている。

山一證券の個人顧客向け営業からスタートした齋藤は、日本インベスターズ証券、メリルリンチ、都内の信用金庫、三田証券と転職を重ねてきた。日本インベスターズ証券時代の上司が、こう語る。

「身長は百七十センチぐらい。声が小さく、当時は千葉県の葛西のマンションに家族と慎ましく住んでいた。ところが、アスク社を訪ねて驚いた。オフィスがマホガニー材で、出てくるグラスはバカラ。派手なスーツと数百万円はする高級時計をはめていた。映画に出てくるような投資銀行のバンカーの演じていましたが、外資にいたのに英語も話せませんでした」

昨年秋、齋藤は、明らかに〝現金〟を必要としていた。10月、目黒区にある地下室付きの豪邸に、極度額3億円の抵当権が設定されている。さらに、株式交換でアスク社の親会社になったLTTバイオファーマ(マザーズ上場)の株式を、「インサイダー取引になる」というLTT社幹部の静止を無視して、破綻申請直前に売り、四億円を手にしている。

この時点で齋藤の手元には、リーマンから〝騙しとった〟数百億円があったはずだ。なぜ、インサイダーの危険を冒してまで株式を現金する必要があったのか。実は、この謎を解く鍵も「証券化」にありそうだ。

サブプライムで「花形外資バンカー」は難民と化した 『週刊新潮』 Part2

そして、〝花形外資バンカー〟の中でも代表的な、ある日本人バンカーの地位も危うくなっている。かつて、モルスタ社長時代のポルテが、「間違ってスカウトした男」と言われる、リーマン・ブラザーズの在日代表、桂木明夫である。

「桂木さんほど、なんの実績も無く出世したバンカーも珍しい。ゴールドマン・サックスにいた頃、上司の持田さん(昌典、現GS社長)が深夜まで残業していのに、九時前にさっさと退社して、接待すら同席しない。モルスタ時代も成果はゼロで、追い出されるように辞職して、しばらく生家で〝家事手伝い〟をしていた。突如、リーマンの在日代表として復帰するのですが、彼の特技は、〝外人に取り入る〟と〝女性を口説く〟だけです」(モルスタ時代の部下)

この桂木が率いるリーマンが、医療再生ファンドの巨額詐欺事件に見舞われた。米系投資銀行の幹部が言う。

「事件の展開次第では、桂木さんの地位どころか、リーマンの東京支店すら消滅しかねない」

3月31日、リーマンは丸紅に巨額の損害賠償請求訴訟を起こした。

その内容は、医療コンサルタント会社「アスクレピオス」(以下アスク社)の医療再生ビジネスに投資した371億円のうち、320億円が、アスク社の破産で回収不能になったというもの。

サブプライムで「花形外資バンカー」は難民と化した 『週刊新潮』 Part1


四月下旬、三十代前半の若手バンカーと外資系の商業銀行のシニアマネージャーとの間で、こんな会話が交わされていた。

「モルガン・スタンレーでは年収2000万円を超えてました」
「残念だけど、君の経歴では600万円が限界。業績を上げれば、ボーナスで上乗せするよ」

米国のサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)危機が、欧米の投資銀行を直撃している。

「シティは公的資金注入で国有化される」「UBSはプライベートバンク以外は解体だろう」「ベア・スターンズ破綻の次に危ないのは、リーマンだ」

こうした声が上がる中、日本の外資系投資銀行では、不動産担保ローンなどの「証券化」を手掛けていたバンカーたちが、次々とクビになっているのだ。