外資凋落-「長銀買収」リップルウッドが表した馬脚『週刊文春』Part3

そして、リップルの最大の成功ディールだったはずの新生銀行も迷走を始めている。その原因は、リップルと同じ「安易な外国人トップの起用」にあるようだ。

昨年6月、新生銀行再建の立役者で社内からも人望のあった八城社長が退任し、モルガン・スタンレー(MS)ジャパンの社長だったティエリー・ポルテが社長に就任した。だが、このポルテの評判がよくない。MS時代の部下が言う。

「ポルテは奥さんが日本人で、日本語が理解できるはずなのに、絶対に日本語で話さない。日本語だと議論で不利になるからでしょう。彼が得意だったのは、社内政治と経費の節減でした」

かつてポルテは、ゴールドマン・サックスのヴァイスプレジデントだった桂木明夫(現リーマン・プラザーズ在日代表)を、億単位の支度金を用意してMSの投資銀行部門のトップにスカウトした。

「桂木さんの招聘は、いわばトヨタの課長をスカウトして日産の役員にしたような人事。桂木さんは、父親が元代議士で、東大法学部卒で興銀出身と、肩書きは立派ですが、バンカーとしての実績は皆無に等しい。ポルテに反旗を翻す形で、MSの投資銀行部門では数名の有力バンカーが退社したほどです。その後、MSで不動産投資が会社の収益を支えるようになると、不動産ビジネスに批判的だったポルテは、社内で立場が弱くなっていった」(同前)

このポルテを新生銀行に迎え入れたのが、リップルの陰で長銀買収を仕切ったフラワーズだと言われている。フラワーズは新生銀行の大株主であり、社外取締役でもある。ハーバード大で同窓生だったポルテを八城の後釜に据えたのだ。ポルテが社長に就任すると、現場へ〝無茶な注文〟が出されることになる。

「IB部門(インスティチューショナル・バンク)の収益を3年で7割増やせと言うのです。具体的な戦略がないので、〝やれることは何でもやれ。株価を上げろ〟という指令だと受け止めています。ポルテは会議でも『我々は恐れすぎていた。ある上場会社を訪問したら、私を暖かく迎えてくれました』と嬉々として語る。銀行のトップを邪険にする会社はありません。でも、それがビジネスに結びつくかどうかは別問題なのですが」(新生銀行幹部)

求心力がないポルテの背後で、事実上新生銀行を牛耳っているのがフラワーズだ。フラワーズと新生銀行の幹部とは、今春、切っても切れない関係になった。

「一部の幹部行員だけが選ばれ、フラワーズ率いる『JCフラワーズ』がヨーロッパの銀行に投資するファンドに、出資しないかと誘われたのです。一口10万ドルを下限に、ケイマンに組成した〝子ファンド〟を通じてフラワーズのファンドに出資する形でした」(同前)

八城が去った後、新生銀行はフラワーズの「機関銀行」と化したのだろうか。

昨年2月、シーガイアのトップに、長野県商工部産業活性化・雇用創出推進局長の丸山康幸が就任し、真っ先に30人の外国人幹部を退社させた。しかし、シーガイアで無駄な時間と金を浪費した結果、日本における「外資系投資ファンド」の主役は、リップルではなく、カーライルになってしまった。ウィルコムを優良企業に再生したカーライルは、今年7月、2156億円の二号ファンドを組成した。

一方のリップルが、株式公開で得た資金で有能な日本人バンカーを採用したという話は聞かない。コリンズに、「ビジネスで成功するだけでなく、日本人に尊敬されたいか」と聞いたが、答えは返ってこなかった。現時点で、リップルの日本向け投資先でイクジット(売却)が完了したのは、フラワーズに相乗りした新生銀行と、半年で手放した日本テレコムだけだ。コリンズはいま、日本企業に落下傘のように外人トップを送り込むことは止め、投資先企業には日本人CEOが就任するようになった。しかし、丸山がトップに立ったシーガイアの再建も、いまだ遠い道のりだ。

「今、丸山さんが手掛けているのは、5年前からやっておくべきだった『従業員の教育』です。再建にはまだ5年は必要でしょう。それまで、コリンズが我慢できればいいのですが」(シーガイア元社員)

シーガイア再建が暗礁に乗り上げれば、リップルの経営はおろか宮崎県の経済をも大きく揺るがすことになる。コリンズが、日本人の能力を最大限に生かすことを覚えない限り、リップルと投資先企業の「凋落」を抑えることは出来ないだろう――。

(文中敬称略)

初出:外資凋落-「長銀買収」リップルウッドが表した馬脚『週刊文春』2006年10月5日号


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