外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』Part3

外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』Part3

日本国内でも、持田の後ろ盾だった男の存在感が薄くなろうとしている。日本郵政社長の西川の評価が、金融界で急落しているのだ。昨年11月、小泉純一郎首相と竹中平蔵総務相の後押しで鳴り物入りで日本郵政社長に就任した西川は、「リスクをとった者が成功する」と、外資の受け売りのような発言をするなど、やる気満々だった。

ところが、年明け早々から西川の求心力の無さが露呈してしまう。今年2月には郵政四事業の社長候補を決めるはずが、西川が誰に声をかけても返事は「ノー」だったという。

「民業圧迫と地銀から批判の矢面に立たされる仕事なのに、社長の収入が2000万円程度と安過ぎるのが一因です。西川さんには、メガパンクの役員クラスの招聘を期待されていたのに、誰も口説き落せない。郵貯銀行社長の有力候補は横浜銀行の池田憲人元常務でしたが、足利銀行の頭取に取られる始末。ようやく色よい返事をしてくれたのがUFJホールディングスの小笠原日出男元社長でした」(メガバンク幹部)

西川と小笠原は、全銀協時代から親しかった。ところが、難色を示したのは、三菱グループでも発言力が強い三菱東京UFJ銀行会長の三木繁光である。

「6月21日の三菱UFJの幹部会で、小笠原さんを突き上げて社長就任を白紙撤固させたのです。三木さんは、自分こそが『最後のバンカー』と自負しているし、三菱銀行時代に批判的なアナリストレポートを書いたGSを今でも出入り禁止にている。結局、小笠原さんは、病気を理由に、社長就任を辞退せざるを得なかった」(金融関係者)

この日は、西川がもっとも可愛がっていた部下の宿沢広朗(三井住友銀行専務)の通夜だった。西川は、宿沢の葬儀にも通夜にも顔を出すことはなかった。小笠原の辞退で弔問すらままならなかったのだろう。

結局、7月に入り、バンカーではない古川沿次氏(三菱商事常任顧問)の郵貯銀行社長就任が発表された。

「新規業務を始める郵貯銀行は、バンカーが数多く必要です。ところが、西川さんが個人的に声をかけても応じてくれない。最近は『公募しろ』とまで言ってるほどです。もっとも、郵貯銀行は給料が安すぎるので、公募してもボロボロの地銀や信金の人間ぐらいしか来ないでしょう」(同前)

西川にとって、持田の別荘での酒宴は、久しぶりの息抜きだったのかも知れない。しかし、日本郵政のトップが、特定の外資系金融機関のトップの別荘に招かれては、様々な誤解を招きかねない。日本郵政は、郵便貯金と簡保で運用資金が300兆円を超える世界最大の金融機関の持ち株会社である。資金運用の委託や金融商品の郵便局窓口販売、信託銀行業務など、証券会社にとっては、途方も無いビジネスチャンスが眠る「宝の山」なのだ。

国会でも西川と持田の「関係」は注視され、6月2日の参議院財政金融委員会で、民主党の峰崎直樹議員が二人の間柄を問い質している。この時、西川は「今年に入ってから(持田と食事をしたことなどは)なかった」と答えている。与謝野馨金融担当大臣は、次のように語る。

「初めて聞く語だからねえ。どういう経緯でそういうお付き合いをされているのかも分からないからいなんとも……」

調布の自宅で西川を直撃した。インターフォン越しに「持田さんとは最近会ってないのですか?」と聞くと、憮然とした声で「ああ」と応じる。ところが、「8月12日に軽井沢で会いませんでしたか?」と尋ねると、「おい、なぜ引っ掛けるような聞き方をするんだ!」と激昂しながら、Tシャツとパジャマ姿で玄関から飛び出してきた。

―最初は「会ってない」という答えでしたが?

「プライベートだからだ。持田は旧友だ。プライベートで会って何が悪い?」

―高級ワインを持参したと聞きましたが。

「持っていってない。たまたま軽井沢にいて、『良かったら来ませんか』と電話があったから、家族と一緒に顔を出しただけだ」

―特定の外資系金融機関トップの酒席に招かれると、誤解されるのではないか。

「なぜ、そういう方向に持っていくんだ。疑惑は無いんだ!」

―西川社長に対する風当たりが強いようです。新政権で竹中さんが政界を去ってしまったら、後ろ眉を失うのでは?

「誰がいてもいなくても関係ない。仕事ってのは、粛々と進めるもんだ!」

終始この調子で、20分以上も怒鳴り続けると、記者の名刺を受け取ることさえ拒否して、憤懣やるかたなしという態度で家の中に消えてしまった。

一体、誰がこの人物を「最後のバンカー」と命名して持て囃したのだろう。そして、西川の影響力が落ちることは、持田にとってもマイナスであることは間違いない。

昨年9月2日、GSのポールソンが来日し、楽天本社で社長の三木谷浩史、副社長の國重と会った。國重が当時を振り返る。

「楽天のファイナンス(増資)に協力したいという営業でした。実は、この時に初めて持田さんと会ったのです。私が持田さんに名刺を出そうとすると、三木谷が、『えっ、知り合いじゃなかったんですか』と驚いてたのを覚えてます」

昨年10月、楽天がTBS株を取得して、経営統合を求めた。この時、楽天側のアドバイザーになったのがGSである。一時は「敵対的買収」に挑むかと思われたが、TBS側の安定株主工作で攻め手を失った。さらにTBS株の下落で含み損を抱え、撤退も難しくなってしまった。

結局、1000億円もの巨費のTBS株買収に費やしながら、膠着状態のまま1年が経過しようとしている。GSは、事態の打開に向けて何らの効果的な提案も、政財界へのロビー活動をした痕跡すらない。

「持田さんの人脈らしい人脈は、西川さんだけです。西川さんが日本郵政の社長になってもTBSの社外監査役から辞任しなかったのが唯一の救いでしょう。とはいえ、今の西川さんにTBS首脳を懐柔して『大人の解決』に導くだけのパワーはない。この問題は、事実上『楽天の負け』が確定しています」(外資系投資銀幹部)

冒頭に紹介した酒宴の席上、国重が自身の「事情聴取説」を笑い話にすると、持田は「ウチの会社の連中も、俺がクビになりゃいいとでも思ってるよ」と応じ、それを聞いた西川が「そりゃそうだろ」とからかい、三人は声をそろえて笑い合ったという。

GSは、数年前までは外資系投資銀行の「輝かしい主役」として巨額のM&Aを成功に導いてきた。しかし、今のGSは、問題を抱えた会社の足元を見て、自分達が絶対に儲かるような絵図を描くだけで、「楽天とTBSの経営統合」のようなストレートなM&Aでは、手を拱いている。証券業界には「GSは日航を狙っているのではないか」という説がある。

「日航は社債の償還などで再び1000億円規模の金が必要になる。その時、GS自身が出資して役員も派遣するのではないか。今回の増資は単なる前哨戦だったのかも知れない」(業界関係者)

初出:外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』2006年9月21日号


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