佐川と笹川を結ぶビデオ『週刊朝日』Part2

あるビデオは、まず画面いっぱいに「世界一家」「人類兄弟」の文字が現れた後、押し寄せる荒波が映り、背広姿の笹川良一氏がセカセカと歩いてくるところから始まる。そして「○月×日××記念式典」というテロップとともに、良一氏が壇上にあがって喋ったり、何やら表彰されたりというシーンが延々と続くのだ。国連に招かれた場面もあれば、良一氏がアフリカの子供と握手するシーンもある。式典に参加した細川護熈元首相や、良一氏の内縁の妻である鎮江夫人も登場する、といった具合だ。一本のテープに、こんな映像だけが二十五分も収録されている。早い話、良一氏の行動を追っただけの何の変哲もないPRビデオである。

このテープのパッケージには、「TVC」という文字が印刷してあった。「TVC」──正確には「東京ビジュアルコミュニケーション山本」というこの映像製作会社こそ、笹川氏と佐川氏を結び付ける接点なのだ。社長は作曲家の山本丈晴氏で、女優の山本富士子さんの夫である。山本社長は、「古賀政男音楽文化振興財団」の理事長でもある。この財団は、「日本音楽著作権協会」から、七十七億円の無利子融資を受け、作曲家の小林亜星氏らが批判して問題になったところだ。

「佐川清さんが芸能界に金をバラまいていた点では、『リバスター音産』の橋幸夫さんが有名です。でも、佐川から得た恩恵では、『TVC』がダントツでしょう」(佐川急便関係者)

TVCには、佐川清会長自らが役員に就任しているばかりか、事件が起きるまで、売上の半分以上を佐川グループに依存していたのだ。

「山本富士子さんが、佐川急便の本社がある京都出身という縁で佐川会長と知り合ったようです。その後、佐川の社内研修用ビデオや、広報ビデオを請け負ったりして関係が深まったのです。古賀政男の弟子だった山本社長は、佐川会長に歌の手ほどきもしていたと聞いてます」(山本社長の知人)

山本夫妻が、東京佐川が経営する赤坂のクラブ「エザンス」の管理を任されていたことはよく知られている。「エザンス」は、佐川急便が政治家や財界人を接待する時だけに使う秘密クラブで、別名「佐川迎賓館」。山本夫妻には、「エザンス」の運営費用名目で、年間三千万円以上のカネが入っていた。こうなると、TVCは、佐川急便の事実上の関連会社と言われても仕方がない。そのTVCが、船舶振興会のPRビデオを作っていたのである。ところが、製作費の出所が何とも不可解なのだ。

「ビデオのパッケージには、振興会がTVCに『委託』したと書いてあります。ところが振興会からは一銭のカネも出ていない。機材や編集の費用から、良一会長の撮影のための海外渡航費まで、月に一千万円以上かかる制作費全部を佐川急便が負担していたんです」(競艇業界関係者)

身銭を切ってまで笹川氏のビデオを作ってあげるとは、何とも殊勝な話である。もっとも、それだけの事をするからには、やはり、それなりの理由があったようだ。

(初出:『週刊朝日』1994年6月24日号)