笹川錬金術の「密約メモ」発見『週刊朝日』Part2

まずは、ブルネイ王国のプロジェクトからだ。住友建設に、「ブルネイのホテル建設」の要請があったのは、もう十二年も前、一九八二年七月のことだった。住友に、このプロジェクトを紹介したのは、他でもない笹川良一会長自身である。

「この計画は、ある仲介者から良一会長の元へ持ち込まれたものです。会長なら、難なく日本のゼネコンを動かせると見込まれたんでしょう。およそ百三十五億円ものプロジェクトですから、会長は一も二もなく飛びついて、陽平さんと一緒に現地に視察にでかけたぐらいです」(笹川良一氏に近い人物)

もちろん、住友建設にとっても良い話だ。要請から一ケ月後の八月二十日には、早くも建設工事の請負契約を取り交わした。しかし、「オイシイ話」は綻び始めるのも早かった。住友建設の関係者が、当時の状況を振り返る。

「どうも工事を発注した王族が下っ端に過ぎなくて、『立派なホテルなど身分不相応』とかで、王様の御機嫌を損ねてしまったらしいのです。それで、ブルネイからの工事代金の支払いが、不履行になってしまったんです」

これに住友側は腹を立てないわけがない。八五年三月の段階で、工事に費やした資金は、すでに五十億円以上にも達していたからだ。住友側と良一氏の間には、この建設工事に関して「一切の責任を笹川良一氏がとる」という内容の書面が交わされていた。この書面に基き、住友建設は良一会長に対し、八五年十月に弁護士を通じて五十億円近い「損害金の請求」をする。

「実は、良一会長には『仲介料』という形で、すでに十三億円が払い込まれていたんです。このカネも、元をただせば住友建設から出たものだと言われてます」(前出・良一氏に近い人物)

この十三億円がどこへ消えてしまったのか、いまだに判然としないという。

「良一さんにお金が入っていたかどうか、まったく分かりません。いずれにしろ、笹川さんの代理人というS氏と何度も交渉をして、最終的に、ブルネイ側が約四十億円、笹川さんが約十億円を支払うことになったのです」(前出・住友建設関係者)

ここで代理人として登場した『S氏』こそ、前出の振興会関係者の発言にあった、「笹川良一氏のウラ処理役」と呼ばれる人物なのだ。S氏の尽力でブルネイ問題にようやく決着が着いたころ、東京・新宿にある「ホテル海洋」の建て替え計画が動き出す。

JR大久保駅を出ると、そこに地上二十三階建のビルがある。このビルが、「ホテル海洋」。修学旅行の受け入れ施設とされているが、場違いなほど立派な建物だ。内部資料によれば、このホテルは、八八年年から四年間にわたってプールされた船舶振興会からの補助金や借入金をもとに、およそ二百五十三億円もの資金を投じて建て替えられたという。これに対して、船舶振興会内部から「修学旅行生を迎える施設としては豪華すぎる」「家具・調度品費用が多すぎる」などの批判が噴出した。

しかし、問題はもっと別のところにあるようだ。

「ホテル建設を受注した戸田建設から、六億円のキックバックがあった・・・」

振興会の元幹部の耳元で、こんなことを囁いた人物がいるというのだ。その人物もS氏といわれる。そして、S氏と飛島建設との関係についても、こんな証言がある。

「振興会系のB&G財団が発注する会館の建設業者が、Sさんのツルの一声で飛島建設に決まったことがある」(笹川系財団幹部)

この話が事実なら、船舶振興会が手掛けるゼネコン絡みのプロジェクトの要所要所でS氏が大きく関与していたことになる。 そして、気になるのは例の「極秘メモ」だ・・・

(初出:『週刊朝日』1994年6月17日号)