運輸省から船舶振興会補助団体へ大挙119人の天下り『週刊朝日』Part2


さらに、五十六団体に対する船舶振興会からの交付金を調べると、九十二年度が計六十一億千九百万円、九十三年度は計八十億三千九百万円、九十四年度は計八十六億千三十万円と、年をかさねるごとに増えている。また、天下り人数は、理事や役員だけで、非常勤の理事や顧問などはリストに加えていない団体もあった。実数はもっと多い。この資料をみた造船業界関係者は、

「これじゃ、運輸省OBの十分の一が笹川サンに食わせて貰ってるのと同じだよ」

と呆れ返るのだ。 競艇を開催するモーターボート競走会は、全国に十九団体あり、この競走会を傘下に収めているのが全国モーターボート競走会連合会である。一年で約二兆円が競艇で稼ぎ出され、その三・三%にあたる約六百六十億円が日本船舶振興会に入ってくる。このカネが、振興会を経由して、海運・造船関連団体や文化・福祉関連団体に配られる。莫大な資金を目当てに、政界・官界はもちろん、海外からも、こぞって要人が頭を下げにやってくるのは、あまりにも有名だ。

問題は、配分率である。振興会が配る交付金のうち、海運・造船関連を「一号交付金」、文化・福祉関連を「二号交付金」と呼んでいる。その中で、事業費として交付されるものを「補助金」といい、給与などの人件費や管理費として交付されるものを「助成金」といっているが、ある業界関係者は、

「一号交付金を受けている団体の方が、二号交付金を受けている団体より、圧倒的に助成金の割合が高いのです。つまり、造船・船舶関連団体の方が、人件費・管理費の率が圧倒的に高いのです」

と指摘する。そこで、前出のリストの団体を調べ直すと、百十九人の運輸省OBのうち、九十五名が助成金の多い一号交付金団体へ天下っている。これでは、天下りの人件費を船舶振興会に賄ってもらっているようなものだ。事業目的の公益法人というより、「天下り目的の公益法人」という批判が出てくるのも無理はない。運輸省OBは、この事実をどう受け止めているのか。九四年度に十九億九千万円もの交付金を受けたシップ・アンド・オーシャン財団の謝敷宗登理事長に聞くと、

「私は運輸省を辞めて三井造船に九年勤めてから、振興会系の人に請われて理事長になったわけで、識見、学識を買われてのことだと思います。民間でも、子会社へ再就職することもありますしね」

と答えた。運輸省所管の公益法人を監督する、運輸政策局の大森寿明政策課長も、

「正確な数字を把握してないので何とも言えませんが、毎年、何人も退官してますから次に行く所は必要でしょう。振興会関連がとくに多いかどうか分かりませんが、それで指導が甘くなることはないと思いません」

と、まるで問題意識を持ち合わせてない様子だ。運輸省が骨抜きになっているなら、やはり国会の追求に期待するしかないだろう。船舶振興会疑惑を追及しようとしているのは、小森氏らだけではない。「国会の爆弾男」といわれてきた楢崎弥之助氏も、すでに質問趣意書を国会に提出している。追及の矛先は、笹川グループへも向かうことになる。振興会では、この事態をどう受け止めているのか。

「『笹川商店』のように言われていますが、交付金の決定システムを見れば、個人が恣意的に決められないことが分かります。振興会は、笹川良一会長の任期中ですし、後継者の議論もありません。(陽平氏が会長になっても)理事会の互選で決まるわけですから、世襲という批判は当たらないと思いますね。小森先生たちのご指摘も、充分にご説明申し上げれば、誤解を解いていただけるものと思ってます」(日本船舶振興会・広渡英治広報室長)

「笹川問題」が国会へ舞台を移すことは、止められそうにない。

(初出:『週刊朝日』1994年6月3日号)

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