運輸省から船舶振興会補助団体へ大挙119人の天下り『週刊朝日』Part1


「日本船舶振興会の問題が、これまで国会の場で取り上げられなかったのは、笹川が恐ろしいからじゃ。だれか勇気のあるヤツが先鞭を付けにゃナラン。その点、私は圧力団体との対立で、なんども修羅場をくぐっとるからな」

五月十九日、国会で「笹川疑惑徹底追及の記者会見をした後、社会党の小森龍邦代議士は厳しい表情で語った。「追及の会」には社会党だけで十人以上が賛同しているという。だが、会見に出たのは三人だけだった。「相手が相手だけに身の安全を考えてやらにゃイカン。家族に危害が加わることがあるかも知れん。コトは慎重に運ぶ必要があるんだな」

会見の席上、小森氏らが配った資料には、今後追及する「笹川問題」ついて次のように書かれている。

1 運輸官僚との関係における問題
2 交付金、補助・助成金などのシステムの問題
3 政治家がらみ=補助金交付をめぐって、なお法整備の放置の問題
4 佐川と笹川の関連問題

その具体的内容は、まだ伏せられているが、

「充分に追求できるだけの資料はそろってる。理屈じゃなくて具体的な事実で追い詰めていくつもりじゃよ」

と、自信ありげである。日本船舶振興会、全国モーターボート競走会連合会(全モ連)と笹川ファミリーを巡る問題が、取り沙汰され始めてから、すでに一年以上がたつ。「最後のドン」と言われた笹川良一会長の衰えとともに内紛が表面化し、それをキッカケに、さまざまな疑惑が噴出している。

まず、ドンの息子である笹川陽平日本船舶振興会理事長が実質的に掌握している「富士レックス」という会社が、振興会系の「モーターボート競争近代化センター」から低利の融資を受けて、場外舟券場「ボートピア姫路」を建設していたこと。さらに、東京都新宿区大久保の「ホテル海洋」建て替えの二五〇億円にものぼる資金捻出の不透明さも指摘された。しかし、監督官庁の運輸省は、陽平氏が就いていた多くの財団の理事職兼任を辞めるよう通達しただけだった。

「それも、マスコミに批判されて格好をつけただけ。問題は、理事長兼任でなく、振興会と全モ連の会長を、陽平さんが世襲するのかどうかなのにね」

こんな振興会関係者の懸念を尻目に、今年四月、笹川良一会長に代わって陽平氏が全モ連会長に就任する人事が運輸省にアッサリ認可された。これで、「第一の牙城」が、陽平氏の手中に収まったことになる。小森氏はこういう。

「公益法人のトップが世襲されるなんて許せん。運輸省が矛盾を抱えてるから適切な指導が出来ないんだ。その最たるものが、船舶振興会から交付金を受けてる団体に、運輸官僚OBが大量に天下っていることなんだ」

この天下りは運輸省の『弱点』として度々指摘されながら、詳細は埋もれてきたが、天下りの実態を示す一通の文書を入手した。この文書は、ある代議士の要請で、昨年秋に運輸省幹部が極秘に作成したものとされている。文書によれば、団体数は五十六、天下り官僚は、実に百十九人にものぼるのである。

(初出:『週刊朝日』1994年6月3日号)

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