国際協力銀行は豪華施設で国費ムダづかい 『FRIDAY』


東京都新宿区市ヶ谷仲之町。陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地の近くで、車一台がようやくすれ違える狭い路地に「曙橋会館」という四階建てビルが建っている。付近を高級マンションなどに囲まれ、昼間はひっそりと静まっている。ところが、夕方七時を過ぎると、この会館は急に活気に満ちてくる。スーツ姿のビジネスマン風の男たちが連れだって会館に入り、時折、黒塗りのクラウンが門の中に消える。敷地内には数十台は駐車可能な広大な駐車場を備えている。

この「曙橋会館」の所有者は、特殊法人「国際協力銀行」(以下JBIC)である。JBICは、99年に特殊法人改革の一環として日本輸出入銀行と海外経済協力基金が合併して誕生した。この結果、JBICは、貿易会社やエネルギー開発を支える輸出入金融にくわえ、開発途上国への円借款や無償資金協力など約8000億円ものODAをも牛耳ることになり、貸出残高約20兆円という世界銀行に匹敵する巨大金融機関となった。そして、JBICが行う国際援助は、郵貯や簡保などの財政投融資と一般会計、つまり国民の税金が原資であることは言うまでもない。

実は「曙橋会館」は、JBICの接待施設、つまり迎賓館なのだ。かつて多くの都市銀行は都心に迎賓館を所有し、大蔵官僚や政治家などの接待に使っていた。しかし、民間銀行は社会的な批判を受けて、迎賓館のほとんどを売却処分した。ところがJBICだけは、人知れず保有し続けていたのだ。JBICの関係者が、曙橋会館について解説する。

「建前は、要人接待や研修用の施設となっていますが、実際は、身内の新年会や忘年会など職員どうしの親睦目的の利用が圧倒的に多い。食事代も、小懐石が2000円、ふぐのフルコースが6500円と安く、大宴会場もある。そして、なぜか財務省の官僚も利用しており、接待汚職で世間の目が厳しくなってからは、曙橋会館で会合をしています」

本誌は、4週にわたって曙橋会館の調査をしたが、頻繁に人が出入りしているにも関わらず、なぜか会館3階に電気が灯ったのは、地方銀行の幹部を乗せたと思われる黒塗りの社用者が入った時など、わずかだった。

「3階は一般職員は出入り禁止で、JBIC総裁など首脳しか利用できない『VIPROOM』がある。そこには四畳ほどの大きさの豪華な『風呂』があって、木の香りが漂っていた。会館内には、理事の一人がカラオケ好きだったので、カラオケルームも設置された」(前出・JBIC関係者)

要人接待とは名ばかりで、公費で幹部職員の遊び場を作ったことになる。そしてJBICの迎賓館はここだけではない。港区元麻布の暗闇坂を下った右手にある「麻布分室」は、一見すると普通の民家のようだが、大使館に囲まれた超一等地に隠れるよう建っており、まさに「秘密クラブ」のようである。

しかし、なぜ都心に2ヶ所も迎賓館を保有しているのか。実は「曙橋会館」は旧輸銀、「麻布分室」は旧基金が保有していたものを、そのまま受け継いだのだ。通常、民間企業が合併すれば様々なリストラが行われるはずが、JBICは肥大化しただけだった。

「両者の給料に百万円ほどの差があったため、基金の給料を上げて輸銀を下げました。いまだに三十代の課長以上で1000万円を超え、部長は1700~1800万円、副総裁で2200万円、総裁は2400万円。課長以上はタクシー利用ができ、理事以上になると一人一台の専用車がつく」(JBIC関係者)

実に、民間銀行の1・5倍ほどの給料を貰いながら、JBIC職員への厚遇はこれだけではない。箱根、志賀高原、蓼科、伊豆に保養所を持ち、社宅は国内18ヶ所、海外5ヶ所もある。しかも、その社宅も庶民感覚とかけ離れている。世田谷区経堂の高級住宅街の一角にある世帯寮は、一見すると平凡な4階建ての官舎のようだが、各塔にオートロックが備えてある。しかも、専用のテニスコート3面とクラブハウスまで付属している。この社宅の家賃はわずか4万円。近隣相場の四分の一以下である。

もちろんJBICの職員が厚待遇に相応しい仕事をしていれば問題は無い。ところが中国ODA削減問題や、スマトラ沖津波被害の救済などで、JBICから積極的な提言は聞こえてこない。

「JBICは完全に財務省に支配されてます。旧輸銀、旧基金時代から歴代総裁の椅子に事務次官OBが座ってますが、彼らは主計畑出身なので、国際金融、まして国際援助の専門知識は皆無。設立四十九年目で初めて誕生した輸銀の生え抜き副総裁も、合併のゴタゴタに巻き込まれて退任させられた。いまだに輸出金融の六割をJBICが牛耳り、政府保証のつく安全な融資枠を民間銀行に開放しないのも、『貸出残高を減らせば存在価値が下がる』という財務省の強い意向でしょう」(メガバンク幹部)

JBICが特権階級でいられる背後には財務省の庇護がある。現在のJBICの篠沢恭介総裁も元大蔵省事務次官。篠沢総裁は、95年12月に大蔵省キャリア官僚による過剰接待、副業スキャンダルで事務次官辞任した過去がある。

自宅前で篠沢総裁を直撃した。

-接待施設を二つ保有し続ける理由は?
「昔から職員の研修、福利厚生として持ってるわけです。まぁ、そういうものの整理は考えるべき課題でしょう」
-なぜJBIC総裁は、財務省の事務次官経験者ばかりなのか?
「適材適所ですよ。発令権者(総理大臣)に聞いてください」
-主計畑出身者に国際援助が理解できるのでしょうか?
「私は国際経験豊富ですよ。構造協議も経験しましたし」
-それと国際援助は関係ないのでは?
「人物をみて適材適所なんでしょ」
-事務次官経験者が適材だと?
「発令権者に聞いてくださいよ」
-財務省OBの天下りが、政府系金融機関の改革を阻害しているのでは?
「そんな自分勝手な意見にコメントする必要ないです」

国連は、安保理常任理事国入りを目指す日本に対して、ODAの増額を要求している。多額の国費が援助に支出される一方、一部の特権階級が肥え太る構図は何も変わっていない・・・。

(初出:FRIDAY 2005年3月18日)

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