政府が座視する新生銀行「7年目の蹉跌」 Part1 『Foresight』



「杉山会長が、佐藤隆文金融庁長官と密かに会談した・・」

八月初旬、新生銀行内部で「トップの密会を巡る情報が飛び交っていた。

新生の杉山淳二会長は、旧三和銀行時代、頭取就任を目前にしながらクーデターで信販会社の大信販(現アプラス)に飛ばされた後、新生がアプラスを買収して、再び銀行トップに返り咲いていた。企画畑一筋で出世した「財務省に顔が利く男」としても知られている。

新生は、今年三月期に発足以来初めて単年度赤字に転落し、六月末に業務改善命令を受け、さらに八月一日に政府保有の優先株が普通株に転換され、日本政府が筆頭株主になる〝異常事態〟を招いていた。

「杉山会長と金融当局首脳との話し合いで、経営危機に打開策が見つかるのではないか」

しかし、こうした新生幹部の期待は呆気なく裏切られた。杉山と佐藤の会見は、密会ではなく霞ヶ関の金融庁で行なわれたのだ。

「何のことは無い、真昼間に表玄関から筆頭株主の日本政府に表敬訪問しただけです。実は、大株主のクリス・フラワーズが来日して、『政府の動きを探ってこい』と指令が出たのです。フラワーズは、『政府は取締役の選任を求めるに違いない』と考えたらしく、〝会談成功の功績〟が大袈裟に行内に喧伝されただけでした」(新生銀行幹部)

新生銀行が迷走している。

消費者金融子会社の経営悪化に加え、サブプライムローン問題が追い討ちをかけ、九月中間期決算も前年同期比で二〇%減となった。昨年六月に社長・会長を務めた八城政基が退任し、杉山会長、ティエリー・ポルテ社長体制になってから株価は半値以下に急落している。

国有化された日本長期信用銀行がリップウッドを中心とした外資系ファンドに売却されてから七年。「再建成功」と言われた新生銀行に何が起きたのか・・・。

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「新生凋落」の兆しは、長銀買収を影で仕切ったゴールドマン・サックスの元パートナー、クリス・フラワーズが、ハーバード大で同期だったポルテを招聘したことに始まる。それまで八城が統治していた組織が、ポルテがトップになった途端に求心力を失い、有力バンカーが相次いで退社したのだ。

「新生の収益を支えていたのは外資系投資銀行からスカウトされた外人部隊でした。しかし、リーマン・ブラザーズで証券化ビジネスのヘッドだったブライアン・プリンスのグループを除けば、二流バンカーばかりだったのです。プリンスが辞めて、ポルテ体制になると、資本市場部門の植山時男やデビッド・ハンコックなど、他社にチームごと引き抜かれるようになった。プライベートエクイティ部門を牽引したダニエル藤井の退社も時間の問題になっている。今の執行役員で仕事が出来るのは、専務のサンホー・ソンぐらいです」(新生幹部)

こうして、新生から金を稼げる人材が流出する一方、〝不可解な出世〟をする外人幹部もいる。その筆頭が、新生証券社長のダニエル・シャイアマンである。

「シャイアマンは、米ベア・スターンズ証券で住宅ローンの証券化を手掛けていたという触れ込みで入社しました。『億単位の収益を上げてみせる』とか、大風呂敷を広げるタイプです。彼が主導したのがパチンコ事業の証券化です。『総額一千億円のビジネスに育てる』と発表したものの、結局、投資先は民事再生となりました」(新生幹部)

このパチンコ事業証券化の舞台となったのは、福島県の大手パチンコチェーン「D社」である。新生は、この投資で、金融のプロにあるまじき大失態を演じている。

「証券化では個々のビジネスの収益に投資して、多くの機関投資家が債権を引き受けることで、リスクを分散・低減するのが大原則です。ところが、他の金融機関から『単なる不動産担保融資だ』と疑われて、誰も引き受けてくれず、全額、新生が抱え込んでしまった。案の定、民事再生後に弁護士から『倒産隔離が利いていない』と見なされて、本来なら法的整理後も入ってくるはずのパチンコ事業からのキャッシュフローがストップしたのです」(パチンコ業界関係者)

つまり証券化とは名ばかりで、パチンコ店の土地に金を貸して焦げ付いたも同然なのだ。


(初出:Foresight 2007年12月号)

政府が座視する新生銀行「七年目の蹉跌」 Part2