業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part3

実は、ポルテを切れない理由がもう一つある。それは、「次期社長候補がいない」からだ。長銀出身のベテラン行員が言う。

「本来なら旧長銀出身者をトップに据えるのが収まりがいい。ところが、有能な人間は既に外資などに転職してしまった。金融法人の担当の加藤正純と事業法人担当の富井順三が、副社長になりますが、外資から招致された幹部と比べると実績が無い。他の日本人では、杉山会長が連れてきた三和出身の寺井宏隆専務は、役員会で『リテール部門は簡単に利益が出ない。10年後を見越してプロジェクトを作るべきだ!』とトップに直言するほどの情熱家でしたが、杉山会長と一緒に退任してしまいます・・・」

では、招致部隊の外国人が社長になればいいのではないか。候補として上がっているのは、サンホー・ソン、クラーク・グラニンジャーの二人だ。しかし、「二期連続で外国人トップは難しい」という見方も根強い。

「昨年8月に日本政府が筆頭株主になった時、サンホーが金融庁に挨拶に行った。すると、『なぜ、あなた(のような韓国人)が来るんだ』という応対をされたそうです。行政側が差別的な態度では、有能な人間があえて火中の栗を拾おうとはしない」(新生銀幹部)

そして、TOBで筆頭株主になったフラワーズ自身も迷走している。

業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part2

昨年8月、優先株が普通株に転換され、日本政府が新生銀行の筆頭株主となった。この頃から大株主のフラワーズが、頻繁に来日するようになる。

「フラワーズは、政府の支配が強まって、自分の意に沿わない取締役を送り込まれることを恐れたのです。いずれ新生を売却する時にも、筆頭株主でないと不利です。サブプラ危機で株価が下がったので、TOB(株式公開買付)での買い増しを決断した」(新生幹部)

このフラワーズの決断は、投資家として当たり前の行動だろう。しかし、筆頭株主でありながら地位が低下することを指をくわえて見ていた日本政府は、あまりにも無策だった。

「昨年11月にTOBの実施を発表した時、金融庁の検査が新生に入っていたのです。検査官は何も知らされずに激怒したようです。金融庁と交渉をしていた杉山会長と船山範雄執行役の二人も立場を失いましたが、後の祭りです。フラワーズは、大株主である国や金融庁を何とも思ってないのでしょう」(旧長銀OB)

そして、日本人を最大級に愚弄したのが、内幸町の「本店ビル売却」である。

新生は、金融早期健全化法によって、日本国が出資している資本注入銀行である。2年連続で早期健全化計画の3割が未達成になると、経営者は引責辞任しなければならない。税金によって救済された民間銀行である以上、このような厳しい罰則が適用されるのは、当然である。

業績低迷の〝元凶〟新生銀行ポルテ社長を解任できないのか?『週刊朝日』Part1


東京都心の内幸町にある新生銀行の本社ビル。5月下旬、行内のいたるところに掲示されていた「あるポスター」が、密かに一斉撤去された。新生銀行の中堅行員が言う。

「昨年の春頃から、『企業イメージの向上』という理由で、杉山淳二会長とティエリー・ポルテ社長の二人が並んだ写真を、行員やお客さんの目のつく場所に何十枚も貼っていたのです。杉山の会長退任が決まった直後に何も言わずに外されました。会長と社長の仲が悪いのは、行員なら誰でも知っていたのですから、とんだ茶番劇ですよ」(新生銀行幹部)

新生銀行はアプラスなど傘下の消費者金融会社の経営悪化に加え、サブプライムローン関連投資の損失計上で、株価が最盛期の半値にまで落ち込んだ。5月14日、杉山が退任し、前会長の八城政基が再び会長に復帰する異例の人事を発表したことで、逆にマーケットからは「経営危機が本格化した」と評価される始末だ。

そして、「経営危機を招いた元凶」と指摘されているのが、米国人トップのティエリー・ポルテ社長である。

外資が笑う「日興コーディアル事件」全真相『週刊新潮』Part3

先に触れた通り、ベル社がソフトバンクから500億円で買収したBBCは、実績の無い会社だった。敢えて、互いの利益のためにBBCという〝毒饅頭〟を作り、日興とベル社が喰らいついた格好である。解毒の方法は、「BBCを500億円の価値がある会社に変える」以外にない。

ところがBBCは、さらに「不可解」な会社に変質していったた。

まず、初年度の決算公告が存在しない。ベル社の広報担当者は、「会社の方針で何も公表できない」という。しかし、資本金五億円以上の会社は商法により損益計算書と貸借対照表の公告が義務付けられている。

「事業立ち上げで多忙で、失念しました。申し訳ありません」(ベル社広報グループの武智智子)

明らかな商法違反である。これが、五百億円もの価値がある企業と言えるだろうか。

翌年、BBCはようやく平成18年2月末の決算公告を出す。これによると、経常利益は約28億円に過ぎないが、特別利益が130億円もあるのだ。その一方、固定資産は30億円足らずである。この数字から推定されるのは、「BBCは保有資産を売却している」ということだ。さらに驚くのは、2年前の買収直前に資本金を51億円に増資したにも関わらず、昨年6月に資本金を1億円に減資し、資本準備金も49億円から4億円に減らしているのだ。

外資が笑う「日興コーディアル事件」全真相『週刊新潮』 Part2

この日に決まった業務提携は、ベル社がソフトバンクの子会社のコールセンター会社「BBコール(BBC)」を500億円で買収し、592億円の設備投資をする。さらにヤフーBBや日本テレコムのコールセンター業務を一括してBBコールに委託するという内容だ。

当時の両社のニュースリリースには、BBCを「設立2000年8月29日、資本金51億円、事業内容コールセンター運営業務」と記されている。しかし、この記述は「巧妙な嘘」と言わざるを得ない。

BBCは、提携が決まった7月20日に、旧東京めたりっく通信の子会社で休眠状態になっていた「東京めたりっく販売」を社名変更し、同時に資本金を1億円から51億円に増資し、約款を「コールセンターの運営」を書き換えただけの会社だ。M&Aの実務に詳しい弁護士は次のように言う。

「売主、買主、そして仲介者の三者、さらに出資者元の日興を加えた全ての人間が、互いに『大人の事情』を理解したから出来上がったディールでしょう。しかし、上場企業が関わるM&Aとしては『スレスレ』と言わざるを得ない」

もっともソフトバンクは、大手の会計士事務所から、BBCの将来価値を算出したフェアネス・オピニオン・レター(第三者の意見書)もとっていた。

外資が笑う「日興コーディアル事件」全真相『週刊新潮』Part1


平成16年7月27日、東京地裁民事第8部。

丸テーブルを囲み、裁判官に、訴訟の当事者や弁護士が主張を行う非公開の「審尋」の席で、ソフトバンク社長の孫正義が強い口調で語った。

「我が国の国際競争力を支える通信インフラにコールセンターは不可欠だ。これほど有望がビジネスが認められなければ、日本に大きな損失になる」

この時、コールセンター大手のベルシステム24(ベル社)は、ソフトバンクと手掛ける新ビジネスのために、約1042億円の増資を計画していた。一方、ベル社の筆頭株主のCSKは、「一部の経営陣が株主の支配権を逃れるための増資だ」として、増資の差止請求訴訟を起こし、争っていたのだ。

「ベル社側の参考人として証言した孫さんの発言が効果的だった。裁判所の判断がベル有利に傾いた」(審尋に関わった人物)

サブプライムで「花形外資バンカー」は難民と化した 『週刊新潮』 Part3

この事件の中心人物とされる「齋藤栄功」は、花形外資バンカーのスタイルを虚飾で装った男で、その転落ぶりは際立っている。

山一證券の個人顧客向け営業からスタートした齋藤は、日本インベスターズ証券、メリルリンチ、都内の信用金庫、三田証券と転職を重ねてきた。日本インベスターズ証券時代の上司が、こう語る。

「身長は百七十センチぐらい。声が小さく、当時は千葉県の葛西のマンションに家族と慎ましく住んでいた。ところが、アスク社を訪ねて驚いた。オフィスがマホガニー材で、出てくるグラスはバカラ。派手なスーツと数百万円はする高級時計をはめていた。映画に出てくるような投資銀行のバンカーの演じていましたが、外資にいたのに英語も話せませんでした」

昨年秋、齋藤は、明らかに〝現金〟を必要としていた。10月、目黒区にある地下室付きの豪邸に、極度額3億円の抵当権が設定されている。さらに、株式交換でアスク社の親会社になったLTTバイオファーマ(マザーズ上場)の株式を、「インサイダー取引になる」というLTT社幹部の静止を無視して、破綻申請直前に売り、四億円を手にしている。

この時点で齋藤の手元には、リーマンから〝騙しとった〟数百億円があったはずだ。なぜ、インサイダーの危険を冒してまで株式を現金する必要があったのか。実は、この謎を解く鍵も「証券化」にありそうだ。

サブプライムで「花形外資バンカー」は難民と化した 『週刊新潮』 Part2

そして、〝花形外資バンカー〟の中でも代表的な、ある日本人バンカーの地位も危うくなっている。かつて、モルスタ社長時代のポルテが、「間違ってスカウトした男」と言われる、リーマン・ブラザーズの在日代表、桂木明夫である。

「桂木さんほど、なんの実績も無く出世したバンカーも珍しい。ゴールドマン・サックスにいた頃、上司の持田さん(昌典、現GS社長)が深夜まで残業していのに、九時前にさっさと退社して、接待すら同席しない。モルスタ時代も成果はゼロで、追い出されるように辞職して、しばらく生家で〝家事手伝い〟をしていた。突如、リーマンの在日代表として復帰するのですが、彼の特技は、〝外人に取り入る〟と〝女性を口説く〟だけです」(モルスタ時代の部下)

この桂木が率いるリーマンが、医療再生ファンドの巨額詐欺事件に見舞われた。米系投資銀行の幹部が言う。

「事件の展開次第では、桂木さんの地位どころか、リーマンの東京支店すら消滅しかねない」

3月31日、リーマンは丸紅に巨額の損害賠償請求訴訟を起こした。

その内容は、医療コンサルタント会社「アスクレピオス」(以下アスク社)の医療再生ビジネスに投資した371億円のうち、320億円が、アスク社の破産で回収不能になったというもの。

サブプライムで「花形外資バンカー」は難民と化した 『週刊新潮』 Part1


四月下旬、三十代前半の若手バンカーと外資系の商業銀行のシニアマネージャーとの間で、こんな会話が交わされていた。

「モルガン・スタンレーでは年収2000万円を超えてました」
「残念だけど、君の経歴では600万円が限界。業績を上げれば、ボーナスで上乗せするよ」

米国のサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)危機が、欧米の投資銀行を直撃している。

「シティは公的資金注入で国有化される」「UBSはプライベートバンク以外は解体だろう」「ベア・スターンズ破綻の次に危ないのは、リーマンだ」

こうした声が上がる中、日本の外資系投資銀行では、不動産担保ローンなどの「証券化」を手掛けていたバンカーたちが、次々とクビになっているのだ。

ゴールドマン・サックス持田昌典社長の「一人勝ち」葉山御殿発見『週刊現代』


神奈川県三浦郡葉山町。天皇家の御用邸がある有数の保養地として知られる葉山の海岸沿いに、巨大な別荘が建てられようとしている。別荘の持ち主は、〝最強外資〟ゴールドマン・サックス(GS)の持田昌典社長(51歳)である。

持田社長は、旧第一勧銀の行員からGSに転職し、激しい出世争いを勝ち抜いて社長に就任した。最近では、ソフトバンクのボーダフォン買収、楽天のTBS経営統合、日本航空の巨額増資など、M&Aの影の仕掛け人として金融界に名前が知れ渡っている。持田社長は、銀座や六本木の高級クラブでの飲食接待や、軽井沢の別荘での一泊食事付きのゴルフ接待などの派手な営業でも有名だ。また、経営危機に陥った企業に無理な契約を強いることから、「外資の帝王」とも言われる。

葉山に建築中の別荘も、まさに「帝王の御殿」に相応しい規模だ。この土地は、もともとソニーの社員向けの保養施設だったが、昨年十一月、楽天のTBS買収騒動の真っ最中に、持田社長が即金で購入した。

外資凋落-「長銀買収」リップルウッドが表した馬脚『週刊文春』Part3

そして、リップルの最大の成功ディールだったはずの新生銀行も迷走を始めている。その原因は、リップルと同じ「安易な外国人トップの起用」にあるようだ。

昨年6月、新生銀行再建の立役者で社内からも人望のあった八城社長が退任し、モルガン・スタンレー(MS)ジャパンの社長だったティエリー・ポルテが社長に就任した。だが、このポルテの評判がよくない。MS時代の部下が言う。

「ポルテは奥さんが日本人で、日本語が理解できるはずなのに、絶対に日本語で話さない。日本語だと議論で不利になるからでしょう。彼が得意だったのは、社内政治と経費の節減でした」

かつてポルテは、ゴールドマン・サックスのヴァイスプレジデントだった桂木明夫(現リーマン・プラザーズ在日代表)を、億単位の支度金を用意してMSの投資銀行部門のトップにスカウトした。

「桂木さんの招聘は、いわばトヨタの課長をスカウトして日産の役員にしたような人事。桂木さんは、父親が元代議士で、東大法学部卒で興銀出身と、肩書きは立派ですが、バンカーとしての実績は皆無に等しい。ポルテに反旗を翻す形で、MSの投資銀行部門では数名の有力バンカーが退社したほどです。その後、MSで不動産投資が会社の収益を支えるようになると、不動産ビジネスに批判的だったポルテは、社内で立場が弱くなっていった」(同前)

外資凋落-「長銀買収」リップルウッドが表した馬脚『週刊文春』Part2

三菱商事からリップルへ転籍し、ベンチャー企業投資を主導した安渕聖司は平成13年に退社、その後USB証券に移った安渕は、次々と巨額案件を手掛け、いまではGEコマーシャル・ファイナンス・アジアの副社長になっている。

「三菱商事や東京海上火災出身者の混成部隊で構成されたリップルの中で、安渕さんはディールソーシング(案件の発掘)が出来る数少ないバンカーでした。ところがコリンズは、週に何度も来日して自らディールを作り上げようとしていたので、安渕さんの退社を深刻に受け止めなかったんです」(リップル元社員)

平成14年には、リップルに在籍していた前出の河原も退社した。河原は、東芝時代の人脈を生かして日立と交渉し、日本コロムビア買収に成功してから、1年足らずでリップルを後にしたことになる。

「河原さんは、案件を右から左に流すバンカーではなく、経営者です。買収した以上、コロムビアの再建も手掛けたかったのでしょう。ところがコリンズは日本コロムビアに米国人トップを据えた」(リップル関係者)

さらに翌年、今度はシーガイア買収を担当した中村彰利がリップルを去り、産業再生機構の常務取締役となる。中村は、シティバンク時代の八城の部下で、リップルでは投資銀行を経験している唯一の日本人バンカーだった。

外資凋落-「長銀買収」リップルウッドが表した馬脚『週刊文春』Part1


「リップルは、もう過去のファンドだよ・・・」

いま、外資系投資ファンドの幹部からはこんな言葉すら漏れてくる。わずか5年前、まだ40歳を過ぎたばかりのアメリカ人バンカー、ティモシー・コリンズが率いる投資ファンド「リップルウッド」は、日本長期信用銀行(現新生銀行)に続き、シーガイア、日本コロムビアなど、経営危機に陥った日本企業を次々と買収した。

しかし、製紙会社の敵対的買収など、日本企業同士のM&Aが当たり前になったいま、リップルの名がメディアに取り上げられることは滅多になくなった。かつて、〝外資〟の代名詞として日本企業から恐れられていたリップルに、一体何が起こったのか。

平7年、コリンズはニューヨークで「リップルウッド・ホールディングス・LLC」を設立したが、その頃から明確に日本進出を目論んでいた。

外資凋落-不動産市場を牛耳るモルガン・スタンレーの暴走『週刊文春』Part3


S氏は、三井不動産からクレディ・スイスを経てMSに入社。今年、マネージング・ディレクターに出世したばかりだ。

「MSは、リートの目玉物件として魅力的な三大都市圏の一等地に優良物件を持っている。目玉物件はリート株価を左右しますが、昨年7月にプロスペクトが公募価格割れをしてから、物件至上主義よりも、多様な投資家層に支持されるポートフォリオを作ることが勝負になった。ところ。がS氏は、物件至上主義を捨てず、『ウチにはいい不動産があるよ』という営業を続けている」(不動産バンカー)

このS氏の営業手法が、森ビルからの「出入禁止」の原因だった。S氏は、森ビルのリートにも自社の不動産物件を売ろうとしたが、その価格が高過ぎたという。

「価格交渉をしている最中、S氏は森社長宛にメールを送り、『主幹事が欲しい』と、直接交渉を試みたようです。物件購入の見返りに主幹事を与えれば、利益相反になり、金融庁に咎められることも考えられる。会社を守るために森社長は『出入禁止処分』にしたのでしょう」(投資銀行バンカー)

外資凋落-不動産市場を牛耳るモルガン・スタンレーの暴走『週刊文春』Part2


平成15年末。MSのニューヨーク本社と東京オフィスの間で、重大な会議が繰り返された。「日本の不動産投資から撤退して利益を確定するか」「このまま日本で投資を続けるか」……。すでにMSは日本に1兆円規模の投資をしていた。撤退しても、自前のファンドの出資者である機関投資家には充分な還元ができる。しかし、最終的に「今まで以上に不動産投資のポジションを高める」と、いう決断が下された。

翌年1月、MSは「日本レジデンシャル投資法人」(日本レジ)の新規公開で、初めてJ-REIT(日本版不動産投資信託)で主幹事を務めた。日本レジの母体企業は、先のPMCである。

「この年から、三大都市圏の地価が急激に高騰した。そして、多くのデベロッパーがリート市場への参入を目指すと、大量のオフィスビルを保有するMSに、『物件を売って下さい』と頼むようになった」(不動産バンカー)

外資凋落-不動産市場を牛耳るモルガン・スタンレーの暴走『週刊文春』Part1


「モルガン・スタンレー出入禁止」

今年4月下旬、不動産バンカーたちの間に、不穏な情報が飛び交った。米系投資銀行「モルガン・スタンレー証券」(MS)が、森ビルから出入禁止処分を食らったというのだ。六本木ヒルズのオーナーでもある森ビルは都心に多数のオフィスビルを所有している。
「森ビルの森稔社長は、MSのティエリー・ポルテ元社長(現新生銀行社長)とも個人的な友人で、上海で建築中の世界量高層のビル『上海環球金融中心』のファイナンシャルアレンジャーをMSに任せるなど、密接な関係でした。情報はデマだと思ったのですが……」(投資銀行のバンカー)

ところが、ほどなくして「森ビルが公開準備を進めているリート(不動産投資信託)の主幹事からMSを外した」という続報が入ってきた。

外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』Part3

外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』Part3

日本国内でも、持田の後ろ盾だった男の存在感が薄くなろうとしている。日本郵政社長の西川の評価が、金融界で急落しているのだ。昨年11月、小泉純一郎首相と竹中平蔵総務相の後押しで鳴り物入りで日本郵政社長に就任した西川は、「リスクをとった者が成功する」と、外資の受け売りのような発言をするなど、やる気満々だった。

ところが、年明け早々から西川の求心力の無さが露呈してしまう。今年2月には郵政四事業の社長候補を決めるはずが、西川が誰に声をかけても返事は「ノー」だったという。

「民業圧迫と地銀から批判の矢面に立たされる仕事なのに、社長の収入が2000万円程度と安過ぎるのが一因です。西川さんには、メガパンクの役員クラスの招聘を期待されていたのに、誰も口説き落せない。郵貯銀行社長の有力候補は横浜銀行の池田憲人元常務でしたが、足利銀行の頭取に取られる始末。ようやく色よい返事をしてくれたのがUFJホールディングスの小笠原日出男元社長でした」(メガバンク幹部)

西川と小笠原は、全銀協時代から親しかった。ところが、難色を示したのは、三菱グループでも発言力が強い三菱東京UFJ銀行会長の三木繁光である。

外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』Part2

そもそもGSと日航は、1000億円規模の巨題ディールを手掛けるほど親しい間柄ではなかった。GSのカンパニーエアラインは全日空で、出張で日航を使うこともない。

「日航は伝統的に、旧日本興業銀行と親しかった。また、西松さんの長男がみずほ銀行、娘さんがUBS証券に在籍していて、『国内みずほ』『海外UBS』のペアが多かった」(大手証券幹部)

ところが、UBS証券で日航を担当していたマネージングディレクター(MD)の安渕聖司が、今年、GEコマーシャルファイナンスのアジア統括の副社長に転職していた。

「安渕さんは、三菱商事からリップルウッドをへて、UBSでは運輸セクターと民営化部門のヘッドとして数多くのディールを手掛けた実力バンカーです。安渕さんの退社で、日航とUBSの間に一時的に空白が出来てしまった」(外資系投資銀行のパンカー)

この間隙にGSが入り込んだという。持田は周到に用兵したようだ。

GSのIBDには、飲食接待などの〝肉体労働〟と司令官を兼務する社長の持田の下に、〝頭脳労働〟を担当する三奉行がいる。三井住友の増資を手掛けた小野種紀、楽天によるTBS嫌買収などのM&Aのヘッドを務める矢野佳彦、金融部門以外を統括する小高功嗣の三人のMDだ。

外資凋落-最強外資 ゴールドマン・サックスの本性『週刊文春』Part1


長野新幹線の軽井沢駅から旧軽井沢方面に車で約10分。人目を避けるように、車道から20メートルほど奥まった場所に、真っ白な漆喰とベージュのレンガで彩られた二階建て瓦葺の瀟洒な別荘が建っている。

この地は、かつて旧華族の徳川家、細川家、そして田中角栄元首相などが別荘を構えたことで知られ、「軽井沢の中でも最上級の一帯で、坪単価4~50万円」(地元の不動産業者)と言われている。

別荘の門扉にはローマ字で「MOCHIDA」と書かれている。別荘の持ち主は、これまで日本における「最強外資」の名をほしいままにしてきた、ゴールドマン・サックス証券(GS)の社長、持田昌典である。平成13年に新築されたこの別荘では、週末になるとゴルフ接待を兼ねた「宴」が催されている。

外資系投資銀行の虚像と実像『週刊新潮』Part6

GSからMDクラスの退社が相次ぐ中、持田がターゲットにしたのが、「最後のバンカー」と言われる三井住友銀行頭取の西川善文(66)だった。

当時、三井住友は、「融三案件」という平和相互銀行やイトマン事件に絡んだ巨額の不良債権の処理に追われていた。さらに、銀行内部には、西川の独走を抑えようとする「旧三井」系の行員が蠢動し始めていた。こうした危機を見透かしたように、GSは千五百億円の増資の見返りに、年率四・五%の高額配当と、GSの欧米の顧客へ最大約二千五百五十億円の信用保証を手にした。世に言う「不平等増資」である。

この一回目の増資は、平成十四年夏、GSのIBDを中心に設置されたチーム「プロジェクト・サマータイム」が策定した。しかし、一回目の増資は、西川が、自ら弱みを曝け出した結果に過ぎない。「持田イズム」によって組織されたGSのIBDが圧倒的な強さを発揮するのは、二回目の増資である。

持田は、破格の好条件で提携を結んだ西川を信用し切っていた。横山が経営する西麻布のフランス料理店「P」で西川を接待し、「今まで、私とゴルフをしてくれる上場企業の経営者は、消費者金融のトップぐらいでしたが、西川さんは付き合ってくれる」と、喜んでいたという。

外資系投資銀行の虚像と実像『週刊新潮』Part5


平成十三年九月、ゴールドマン・サックス証券(GS)の持田昌典(50)は、港区白金の聖心女子学院に近い一等地に転居した。六百平米の土地に築いた三階建て総床面積八百五十平方㍍の大豪邸は、「土地だけでも約五億円は下らない」と言われる。ガレージには、新車価格千四百万円のイタリアの高級スポーツカー「マセラティ・グランスポーツ」が停まっている。

持田は、父の会社が廃業に追い込まれて家を失ってから、二十年の歳月を費やし、自らの手で「上流階級」の生活を取り戻すことに成功していた。

この時点で、「持田は百億円近い資産を築いた」(GS関係者)と言われている。GSの株式公開で、パートナー(共同経営者)として数十億円の配分を受け取り、NTTドモコ株の新規公開などのメガディール(巨大案件)を手掛け、巨額のボーナスを得ていたはずである。すでに「金儲け」のために働く必要はなかった。実際、GSの元パートナーの多くが会社を後にしていた。そして、「第一勧銀に廃業に追い込まれた」と言われる父親の武雄も他界していた。

外資系投資銀行の虚像と実像『週刊新潮』 Part4

不良債権部隊が派手な買収で利鞘を稼ぎ出していた頃、持田昌典=現ゴールドマン・サックス証券社長=は、GS東京支店長に就任していた。もっとも「支店長」とは名ばかりの肩書きで、NTTドコモの新規公開というGSの歴史に残る偉業を果たしたにも関わらず、持田の上にはマーク・シュワルツという「天下り外人」が社長として君臨していた。

持田が、さらに「白人の上」を狙うには、MSのカルシやシュミットと同様、実績を作る以外にない。IBDの実績は、「M&Aリーグテーブル」の順位によって決まる。「リーグテーブル」とは、アドバイザーとなった投資銀行や証券会社のランキングで、M&Aの取引金額の多い順に民間の調査会社が集計したものである。

「投資銀行が得るM&Aのアドバイザリーのフィー(手数料)は〝レーマン方式〟によって算出されます。例えば、取引額が三億円以下なら八%、三億円から五億円なら六%という具合に取引額に応じて成功報酬が増減する仕組みで、巨額のM&Aであればあるほど、投資銀行の懐に入る金額が増えることになります」(M&Aコンサルタント会社幹部)

持田が率いるIBDが、巨額M&Aのターゲットとして選んだのは、「銀行合併」のアドバイザーを請け負うことだった。そして、一勧、富士、興銀の三行が「みずほフィナンシャルグループ」へ経営統合する際のアドバイザーとなり、平成十一年のリーグテーブルで、GSは「日本企業が関わるアドバイザリーランキング」の取引額ベースでトップに躍り出た。

外資系投資銀行の虚像と実像『週刊新潮』 Part3


平成八年十一月。

ゴールドマン・サックス(GS)の日本人パートナー、江原伸好(53)=現ユニゾン・キャピタル社長=が会社を後にした。江原は、川島健資(51)=現メリルリンチ日本証券副社長=とともに黎明期のGSを支え、金融機関向けのカバレッジ(営業)を担当し、FIG(FINANCIAL INSTITUTION GROUP)のヘッドとして、十六年の長きにわたって「GSの顔」を務めてきた。

日比谷高校を中退して渡米。シカゴ大学でMBAを取得後、米系の金融機関で働いてきた江原は、長身でスマートな風貌と相まって、ウォールストリートの匂いがする外資系バンカーと呼ぶに相応しい人物だった。電電公社(現NTT)の政府保証債の米国での発行など、数々の実績をあげた江原は、邦銀の企画部や国際部では「GSで最も華のある信頼できるバンカー」と語り継がれている。

しかし、この〝信頼できるバンカー〟江原の退社は、GSが、「古き良き」投資銀行の伝統を脱ぎ捨て、狙った獲物を絶対に逃さない「最強外資」へと、その姿を変貌させることを暗示していた・・・。

外資系投資銀行の虚像と実像『週刊新潮』 Part2

持田がGSへ転職した八十年代、日本のマーケットでの外資系投資銀行は、取るに足らない存在だった。

唯一、頭角を現しつつあったのは、山一證券からソロモン・ブラザーズ・アジア証券に転じていたトレーダーの明神茂(55)だけで、M&Aや引き受けなど、いわゆる投資銀行部門(IBD)は赤字を垂れ流す「お荷物部署」だった。また、外資系金融機関で、実力バンカーと呼ぶに相応しい日本人は、平成四年にシティバンクの在日代表に就任する八城政基の登場まで待たねばならず、当時は、米国からの「天下り外人」によってトップの座を牛耳られていた。

この頃、GSの投資銀行部門の主な仕事は、米国の不動産や企業を日本の投資家に売るため、金融機関や生保などに頭を下げて営業活動するというものだった。営業を担当していたのが、GSの東京支店を数名で支え続けた川島健資(51)=現メリルリンチ日本証券副社長と江原伸好(53)=ユニゾン・キャピタル社長の二人。持田は、コーポレートファイナンス、日本の証券会社で言うところの「引き受け」が仕事だった。

実は、当時のGSは火種を抱えていた。

外資系投資銀行の虚像と実像『週刊新潮』 Part1



六月初旬。

数名の外資系投資銀行のバンカーが、埼玉県所沢市の西武鉄道本社を訪れていた。訪問の目的は「西武鉄道の買収交渉」。その外資とは、米系投資銀行のゴールドマン・サックス証券(以下、GS)である。この時、西武とGSは初の公式会合だった。しかし、その場に、GSのトップである持田昌典(50)と、みずほコーポレート銀行出身の後藤高志・西武鉄道社長(56)の姿は無かった。

「後藤社長と持田社長が、直接会って交渉することはあり得ないでしょう。なぜなら、二人の間には、絶対に埋めることが出来ない『溝』があるからです」(メガバンク幹部)

西川善文と金融庁との最終決戦『週刊文春』Part2

平成十三年四月、住友銀行はさくら銀行と合併し、「三井住友銀行」に生まれ変わり、西川が頭取に就任した。当初、「住友がさくらを救済した」とも言われたが、合併直後に、旧さくらの行員を中心に、「住友には巨額の不良債権が隠されていた」という驚きの声が上がり始める。だが、その実態はなかなか顕在化しなかった。

「合併後の平成十四年初頭の金融庁の検査も非常に甘かったのを覚えています。担保不動産の価値を『路線価+営業キャッシュフロー』で計算するような水増し査定が当然のように許されていた。それで、『融三案件』の多くが開示不良債権にならなかったようだ」(三井住友幹部)

もっとも、問題が表面化しなかった最大の理由は、「融三案件」の詳細を知る行員が、ごく少数の住銀出身者だけに限られていたからだ。「融三案件」を「西川子飼い」でガードする一方、処理の手法に疑問を持つ首脳たちは、次々と退社に追い込まれた。故堀田庄三住銀会長の長男・堀田健介元副頭取(現モルガン・スタンレー・ ジャパン・リミテッド会長)、児玉龍三常務米州本部長(現中外製薬専務)らは、西川頭取によって放逐させられたと言われている。

西川善文と金融庁との最終決戦『週刊文春』Part1


「不良債権」・・。
バブル経済の崩壊から十五年。景気が回復の兆しを見せるたびに、不良債権という名の「魔女」が地中から手招きし、日本経済を不況の泥沼へ引きずり落とし続けてきた。不良債権の魔の手は、有力企業を次々に崩壊させ、高度経済成長の立役者だった経営者までも牢獄に送り込んだ。日本経済を不況から救い出すには、「魔女」の息の根を止めなければならないのは、誰の目にも明らかだった。

この不良債権という「魔女」と、半生をかけて格闘し続けた男いる。

西川善文、六十六歳。

三井住友銀行頭取、そして全国銀行協会会長であり、テレビ番組でも鋭い眼光と厳しい口調で、時に金融行政を一刀両断にしてきた。その姿には、自信に満ち溢れた豪腕バンカーの風格が漂い、彼の存在は「西川プレミアム」となり三井住友の株価を引き上げる牽引役となっていた。

他国に税金の拠出を求めるヘンリー・ポールソン

金融不良資産買い取り、日欧に協調促す 米財務長官(日本経済新聞)

ヘンリー・ポールソン米財務長官は、日本や欧米諸国にも公的資金の支出を求めるようだ。つまり、日本に支店を構える米系投資銀行、欧州系投資銀行、さらに投資ファンドなどが抱える不良債権を、日本国民の税金を使って買い取れということだろうか。少なくとも日本の金融機関は、現時点では国に救済を求めなければならない状態ではない。先週まで、韓国産業銀行のリーマン・ブラザーズ買収には公的資金を出さないと言っていた男が、ここまで変節できたとは、驚きを通り越して笑うしかない。ポールソンが提示した不良債権買取構想では、潰れてもいない金融機関からCDOなどの不動産関連債券を買い取るというもので、いったい、どこの誰がそんな複雑怪奇なデリバティブにプライシングをして、どこの誰の判断で売買が決まるのだろうか。国が金融機関に資本注入して、半ば強制的にRCCに単純明快なローン債権を買い取らせた日本とは事情がまったく異なる。そもそも実現性すら疑問である。

リーマン・ブラザーズ/アスクレピオスの巨額詐欺事件は主犯の〝逃げ切り勝ち〟か

17日、丸紅を騙った医療機器巨額詐欺事件の主犯、齋藤栄功(アスクレピオス前社長)がLTTバイオファーマ株のインサイダー取引で再逮捕された。もっとも、この件は今年2月に明らかになっている。この逮捕が最後で、二十日間の拘留後に詐欺罪などで起訴されることになるだろう。そして、リーマン・ブラザーズが騙し取られた371億円は戻らないまま、事件の捜査が終焉することになりそうだ。

この事件については、「サブプライムで『花形外資バンカー』は難民と化した」(『週刊新潮』2008年5月22日)の中で書いたが、捜査が最終段階になっても、いまだに謎が多い事件である。

・齋藤の動機は?

アクスレピオスの医療再生ファンドそのものは、投資家からの出資も病院への投資も実体があった。出資者は機関投資家だけでなく、個人や従業員も含まれていた。彼ら全てを裏切ってまで、破綻することが目に見えている巨額詐欺に手を出したのはなぜか。また、丸紅の偽部長まで仕立てて371億円を騙し取ったのなら、そのまま山分けにして逃げればいいはずだが、なぜ他の出資者へ償還したのか。

・リーマンはなぜ371億円も出資したのか?

ゴールドマン・サックスの正体『文藝春秋』Part3

しかし、我が世の春を謳歌していたこの時期、GSに少しづつ「変化」の兆しが見え始める。

九八年は、長銀、日債銀が相次いで破綻し、日本は未曾有の金融危機に直面していた。GSは、長銀買収では政府側、日債銀ではソフトバンク側のアドバイザーとなった。この時、契約に盛り込まれた「瑕疵担保条項」(担保価値が目減りした場合、政府がその債権を買い取る)が、GSによる日本政府への背信行為ではないかという批判が出始める。「勝ちすぎ」に対する批判も多い。

「GSの社員が酔っ払って六本木交差点でベンツに嘔吐した。運転手のヤクザが怒って出てくると、女性幹部が財布をだして、『車ごと弁償するから値段を言いなさい』と怒鳴りつけた」
「接待には必ず社員の『美女軍団』が同席する。知的でテレビ局のアナウンサーのような女性にかこまれて、担当者は簡単に落ちてしまう」・・・。

GSから、古き良きパートナーシップ時代の堅実さやチームワークが少しづつ失われ、「金儲け主義」や「自分勝手」な振る舞いが目立ちはじめたという指摘は、GSのOBからも上がっている。

ゴールドマン・サックスの正体『文藝春秋』Part2

持田の入社から五年後の九〇年二月、ソロモン・ブラザーズの東京支店の若き債券トレーダー、二十六歳の松本大は、友人の紹介でGSへの転職を決意する。

松本は、東大法学部を卒業後、海外旅行で自分の意志が伝えられなかったことにショックを受け、「英語を喋れるようになりたい」という理由でソロモンに入った。ニューヨークの新入社員研修で、MBA取得者などを向こうに回し、債券数理などのテストで百二十名の中でトップを取るなど、持田とは対照的にデビューから「天才」ぶりを発揮していた。

当時のソロモンは、「キング・オブ・ウォールストリート」の名に相応しい派手な会社だった。ところが、一方のGSは、未だにパートナーシップ(共同経営)を守る、堅実だが地味な会社だった。おそらく松本が転職した時は、債券部については、メジャーリーグからマイナーリーグに降格したような感覚だったかもしれない。松本が、当時の様子を語る。

「(GSの)債券部のレベルがあまり高くなかったので驚きました。債券数理とかデリバティブとかマーケットとか、色んなことに対する理解力がソロモンと比べると低かったように思います。ところが、当時のGSの方は、あまりそうは感じてなかったかも知れません。というのは、当時、債券ビジネスに関してはソロモンが超トップで、その下にモルガン・スタンレーやGS、更に下にリーマン、はるか下に日系があったからです。全体のピラミッドの中ではGSは格上でした。でもソロモンからレベル低かったですね」

ゴールドマン・サックスの正体『文藝春秋』Part1


東京タワーすら睥睨して聳え立つ六本木ヒルズ---。

十一月、六本木ヒルズのシンボルである「森タワー」の四三階から四八階に、外資系投資銀行「ゴールドマン・サックス証券(以下GS)」の東京支店が入居した。最高層階のテナントスペースをすべて借り上げる「バンク借り」というもので、二階の受付も、六基あるエレベーターも、すべてGSの専用で、他の入居テナントであるヤフー、楽天、グッドウィルなどのベンチャー企業群より、文字通り数段上に存在している。

GSは、三井住友銀行の千五百億円の増資や、ダイエーグループのホテル買収、そして倒産したゴルフ場を次々に買い占めて西武グループを凌駕する日本最大のゴルフ場オーナーになるなど、不況に喘ぐ日本を席巻している。オフィス移転は、「ライジングサン・プロジェクト」と名づけられたもので、拡大を続けるGSの人員を支えるためのものだ。

メディア買収劇に見る外資系投資銀行の実像『Foresight』Part2

一方、「楽天・TBS」の攻防劇は、楽天がGS、TBSがメリルをアドバイザーに雇ったことから、「外資対決」として注目された。九月二日にポールソンが来日した理由を、楽天の幹部はこう語る。

「当時、楽天が買収を進めていた米国のネット広告会社『リンクシェア』側のアドバイザーに米国のGSが就任していたのです。交渉の過程で、楽天の財務状態と積極的なM&A戦略を知って、『有利子負債の圧縮のために増資したらどうか』と提案してきた。この時点では、TBS買収の話題はなかった」

「TBSは別」という説明が真実かは分からない。「持田がTBS買収をけしかけた」という説も有力である。しかし、二千億円の増資となれば、一・五~二%のフィー(手数料)として三十~四十億円の金がGSの懐に入る計算になる。ポールソンが、文字通り飛んで来たのも当然である。

GSは、冒頭のような「持田の接待営業」ばかりが有名になったが、接待だけでディールを奪えるほど投資銀行の世界は甘くない。IT企業の社長が証言する。

「数年前、当社の増資をモルガン・スタンレーと進めていた時です。この情報を聞きつけた持田さんが、その日ロンドンから到着したというGSのバンカーも一緒に、突然やってきた。彼らが説明するストラクチャーが、明らかにモルスタより優れていたのでGSに乗り換えました。持田さんは、普段は六本木のクラブで馬鹿騒ぎをしていますが、仕事の決断、行動は誰よりも早い」

メディア買収劇に見る外資系投資銀行の実像『Foresight』Part1


昨年九月三日、土曜日の夕方。長野新幹線の軽井沢駅ホームで、六人ほどの男たちが声をあげて笑い合っていた。明らかにゴルフ接待の帰途といった風情である。日焼けをした精悍な顔つきで、ヨレヨレの黒いポロシャツを着た小太りの中年男性が、会話の中心になっている。

「いやぁ、お会いする前はどんな方かと思ってましたが、気さくで楽しかったですよ」

こう言われると、黒いポロシャツの男が笑いながら応じる。

「それはもう、何といっても大事なお客様の前ですからね。会社ではもうちょっとピシッとしてますよ。がっはっはっはっ」

独特の甲高い声、人懐っこい笑顔・・・。この男こそ、ゴールドマン・サックス(GS)で「最強外資」と言われる日本の投資銀行部門を統括する、持田昌典社長である。

リーマン・ブラザーズ破綻と「ドブ浚い」

15日、16日の主要株価指数
FT100    5203.80 - 212.90(- 3.93%)
DJIA     10917.51 - 504.48(- 4.42%)
NASDAQ   2179.91 - 81.36(- 3.60%)
S&P500    1193.53 - 58.17(- 4.65%)
TOPIX     1117.57 - 59.63(- 5.07%)
NIKKEI     11609.72 - 605.04(- 4.95%)
JASDAQ    52.97 - 2.61(- 4.70%)
J-REIT     1177.84 - 88.41(- 6.98%)
SSEC      1986.64 - 93.04(- 4.47%)
SZSA     570.75 - 8.02(- 1.39%)
HSI     18300.61 -1052.29(- 5.44%)

意外というのも変だが、リーマン・ブラザーズの破綻後、パニック的な大暴落はなく「普通の暴落」で済んだようだ。欧米日の金融当局が、素早く短期市場に資金を供給して連鎖的な破綻に楔を打ったことも効果的だった。目の前の危機を放置して崩壊寸前に陥った日本相撲協会とは大違いの迅速、的確な対応だった。(当たり前だ)

月刊『現代』休刊

月刊「現代」など休刊=講談社

講談社の月刊『現代』が、今年12月に休刊することが決まった。『現代』では、二十代の頃に何度かデータマン(取材記者)として仕事をさせてもらい、その後、署名記事も書かせてもらった。休刊の理由は読者の高齢化と部数低迷である。A5版(A4用紙の半分の大きさ)の総合月刊誌がマーケットから受け入れられなくなったことは、雑誌メディアに携わる人間であれば15年以上前から共通認識だった。『文藝春秋』『新潮45』『中央公論』『世界』『正論』などが代表的だが、トップの『文藝春秋』も最盛期から大きく部数を落としている。この中で、新機軸を打ち出したのが『新潮45』と『現代』の二誌だった。リニューアルは『新潮45』のほうが早く、保守系オピニオン誌の枠にとらわれず殺人事件や未解決事件のストーリー・ノンフィクションを掲載して部数を伸ばした。『現代』は、長く〝月刊版「週刊現代」〟のような構成だったが、前編集長時代からノンフィクションに注力していた。『現代』の編集部は、『週刊現代』や『フライデー』で育った編集者で占められている。彼らが培ったノウハウや人脈を活かすために、政治、経済、社会事件などの硬派なノンフィクションを売り物にすると考えるのは、至極真っ当な編集方針の転換である。

「サブプライム不安」で金融機関に出回る「危ない企業リスト」 『週刊新潮』 Part2

リストには、「腎臓売れや」で知られる商工ローンの一社、あのSFCG(旧商工ファンド)の名前がある。中小企業金融のビジネスローンといえば聞こえはいいが、実態は経営者の個人保証で金を貸す商売だ。一昨年12月に成立した改正貸金業法で、大打撃を受けている。

「100万円以上の融資の上限金利を29%から15%に落とされた。ついに、無担保ローンから完全撤退し、現在では新規融資を一時的にストップしているようです」(大手証券幹部)

業界2位のNISグループは、すでに投資ファンドの傘下に入り、3位のシンキは、親会社の新生銀行が公的資金すら返済できない状態。3社揃ってリストに入るのも当然だろう。もっとも、サラ金業者は再編候補に入っていない。実はかつて業界最大手の武富士買収に動いた外資がいる。

「オーナーの武井保雄が盗聴事件で逮捕された後、ゴールドマン・サックスが武井一族に接近して、保有株の買収を狙っていました。持田昌典社長と、右腕の小野種紀マネージングディレクターの二人が、高井戸の武井一族の御殿『真正館』に招かれてカラオケをするほど信頼されていた」(米系投資銀行幹部)

しかし、グレーゾーン金利分の過払い利息返還訴訟で水泡と化す。

「サブプライム不安」で金融機関に出回る「危ない企業リスト」 『週刊新潮』 Part1


ここに一通の文書がある。「再編候補先」というタイトルで、上場企業ばかり19社をリストアップしたものだ。さらに、一社につき数10ページにわたる調査報告書が付随し、英文で過去の業績や将来の見通し、役員や大株主の志向まで細かく分析してある。リストを見たメガバンクの幹部が言う。

「昨年の暮頃から、外資系出身のM&A仲介業者が、『ここと資本提携をしませんか』という提案を持ち歩いていた。リストの会社は、この一年間で株価が急落した企業ばかりです。しかも、ほとんどの会社には既に外資系投資銀行が株主として顔を出している。近い将来、M&A絡みの標的になる企業でしょう」

しかし、スティールパートナーズや村上ファンドのような、敵対的買収で株価を吊り上げるターゲット企業ではない。

「日本では敵対的買収は馴染まない。そこで、サブプライム危機で先進国で最も株価が下落した日本企業に、戦略的な資本政策を提案して、M&Aやファイナンスでディールを狙う。リストには、有力な再編候補が記載されている」(M&Aコンサルタント会社代表)

防衛庁「UX次期多用途支援機疑惑に怪しげな男の影」『週刊朝日』vol.2

野中に一蹴されて、UXの機種選定は宙に浮いてしまったようだ。防衛庁は、八月三十一日の来年度予算の概算要求で、「UXを二機、七十二億円で購入する」とした以外、機種については一言も触れず、九月中旬に開かれる関係四閣僚協議の席上での機種決定に望みをつないだ。しかし、それもフランスのバラデュール首相から村山総理に「機種選定に開かれた競争」を求める親書が送られて、またしても機種の決定は先送りになった。ある軍事評論家が言う。

「大倉商事を通じたガルフ購入の図式を整えたのは新生党。竹下派が分裂して持ち出された防衛利権を、政権を取り戻した自民党が黙って見過ごすわけがない」(軍事評論家)

UX商戦には、新生党や防衛庁の屋台骨を揺るがしかねない数々の疑惑が囁かれてきた。今から三年も前に、ガルフを輸入する大倉商事と、ファルコンの整備会社という異例の組合せに、防衛庁の航空幕僚幹部が積極的に関与したといわれるのが一つ。二つ目は、大倉商事の子会社から新生党の国防族議員に多額の顧問料が支払われていたという問題である。そして疑惑の鍵を握るのが、ジョン・カーボーという米国人ロビイストである。。昨年、本誌が指摘した「AWACS疑惑」でも、やはりこの男が介在する。

防衛庁「UX次期多用途支援機疑惑に怪しげな男の影」『週刊朝日』vol.1


「新生党が牛耳っている防衛利権を、自民党が突き崩そうとしている」

いま、防衛庁はもとより、永田町では、この噂でもちきりだ。引き金は八月十二日に行われた閣僚懇談会での野中広務自治相の発言だった。この日、航空自衛隊が中期防衛力整備計画の中で購入を決めていたUX(次期多用途支援機。司令官の移動や連絡、訓練支援などに使われる))の予算と具体的な機種決定が、閣僚間で承認されることになっていた。ところが野中氏が、「疑惑あり」として待ったをかけて、機種選定が暗礁に乗り上げてしまったのだ。

「UXは、最初からどの機種を購入するか決まっていたという噂がある。国会でも問題になったぐらいだから、第三者機関を設置するなどして、公正ににやるべきだ」

現職閣僚として異例の問題提起である。一回の購入単価だけで、数十億円を軽く超える買い物をする官庁は、防衛庁を除いて存在しない。この莫大な「防衛利権」を牛耳るといわれる新生党に挑みかかった野中広務氏を直撃した。

新井将敬代議士と「桃源社」佐々木吉之助被告の〝深い仲〟『FRIDAY』




「新井将敬さんが言っている事は、ウソばっかりです。彼は大蔵官僚だった頃から、桃源社の佐々木吉之助社長と非常に親しかったんです。しかも新井さんは、その関係で大蔵官僚時代に、事実上『副業』までしていたのです」(都内で会社を経営するA氏)

先月、新進党を離党した新井将敬代議士(48歳)と、競売入札妨害罪などで逮捕、起訴された桃源社の佐々木吉之助被告(63歳)の“仲”について、本誌はこんな爆弾証言を入手した。

関西老舗暴力団と「末野マネー」を結ぶ〝問題の土地〟『FRIDAY』


「いい加減な言い逃ればかりで腹が立ちますよ。末野社長は、『私は暴力団と関係ない』などと言ってますが、あれも真っ赤な嘘。その動かぬ証拠が、ミナミの『八幡筋モータープール』なんです」(金融機関の末野興産担当社員)

見せガネで「資産隠し」のダミー会社を設立し、公正証書原本不実記載で大阪地検特捜部に逮捕、起訴された末野興産の末野謙一社長(52歳)。「隠し資産ははない」「身を粉にして借金を返済する」・・・・本誌のインタビューや国会答弁で繰り返した末野社長の“嘘”が、次々と明らかに中、本誌は、「暴力団とは一切関係ない」という言葉も、嘘だったという証拠を掴んだ。

「住専借金王」末野興産グループ〝資産隠し〟の超豪華パチンコ店『FRIDAY』


「返せるもんは返してます。隠している金なんて一銭もありません」

「末野興産」の末野謙一社長(52・写真上)は、昨年末、本誌の取材にこう明言していたハズである。だが、やはり「資産隠し」はあった。それが、写真左の超豪華パチンコ店である。

住専5社から2365億円(95年6月末)もの融資を引き出した「末野興産」グループを巡っては、破綻前日の「木津信組」から引き出された預金約370億円などの「資産隠し」疑惑が指摘されていた。しかし末野社長は、

「あの預金は、私のものじゃない」

と答え、これまで実態は把握できなかった。ところが今回、ついに「資産隠し」の動かぬ証拠を発見したのである。

住専5社から1800億円 最大の借り手 末野興産社長を直撃『FRIDAY』


「確かに会社全体で3500億円ほど借金はあります。けど、ウチは大阪や東京、九州の一等土地に物件を持っとるまっとうな貸しビル業者であって、谷底や山林を担保に金を借りたようなムチャクチャな業者とは一緒にせんで下さい」

8兆円もの不良債権を抱え、公的資金の導入による一括清算が決定的になった住宅金融専門会社(住専)。写真の人物は、この住専5社から、実に約1800億円以上の最大の融資を引き出した「末野興産」(大阪市西区)の社長、末野謙一氏(52歳)である。

末野氏は、吹田市内の千里ニュータウンに3階建て総床面積約400平米の豪邸を構え、運転手付きのベンツ600に乗り込んで毎日出勤している。その姿からは、とても、グループ全体で約3500億円もの借金を抱えた会社のオーナーとは思えない。

出勤前に直撃すると、末野氏は、意外なほど鷹揚に取材に応じてくれた。

羽賀研二「金と女」巨大伝説を徹底解明 『週刊朝日』Part4

「研二は、大阪に行くたびに二郎さんと一緒に、新地やミナミの高級クラブへくり出して、多い日には一晩で何百万円も使うとったな。そこで知り合うた末野興産の役員に、連日のように電話をかけまくっそうや」(前出・関西の芸能プロ関係者)

ところが、そんなに簡単に借金話が運ぶハズがない。しかし、どうしても諦め切れない羽賀は、昨年八月、もともとゴルフは滅多にやらないハズなのに、渡辺氏に頼み込んで、末野興産が主催したハワイのゴルフコンペに参加するのである。「奥尻島被災者救援」という名目で開催されたコンペには、藤田まこと、やしきたかじん、大島親方、××親方、元横綱旭富士などのそうそうたるメンバーに混じって、梅宮辰夫ファミリーの姿もあったのである。なぜ、梅宮氏が参加したのか。

「末野興産は梅宮さんのスポンサーでもあるんです。もう長いこと、家族ぐるみの付き合いをしてる。『兄貴』『兄弟』と呼び合うような間柄なんですよ」(関西の不動産業者)

そして、このゴルフコンペで、初めてアンナと知り合った。二人はホテルハレクラニのプールサイドで、何度かあっている姿を目撃されているのだ。借金の方も、末野会長と同席したチャンスに申し出て、会長から承諾をもらったという。ハワイから戻った羽賀氏は、不動産やお定まりのダイヤルQ2などを、末野興産に持ち込んだ。

羽賀研二「金と女」巨大伝説を徹底解明 『週刊朝日』Part3

羽賀は、これまでの借金の返済資金にしたいと説明し、その明細を書面にして持ってきた。書面は、A4版の用紙二枚で、毎月の支払い先や支払い先金融機関、支払い期日などが項目別に克明に記されている。

その一例を抜き出してみると、三つのゴルフ会員権のローンとして、北拓銀行に毎月七十万円。横浜商銀への返済額は八十二万円。中には、当時住んでいた田園調布の借家の持主である有名女優の名前もある。母親の初子さんへの仕送りは五万円である。

この明細書は、かつて羽賀と同棲していた女優の妹が書いたものといわれ、毎月の返済額を合計すると、四百万円を超えている。さらに、一部週刊誌で報道された女性からの借用書も添え、惨状を訴えた。借用書の記載によると、平成四年二月に二千万円、六月には五千万円を返済し、以後三十万円から二十万円を返する計画になっている。この返済計画が、最初の支払い期日から破綻したことは既に報じられている通りだ。

もっとも羽賀はこの女性からの借金をかえす気が全然なかったわけでない。ある人物に「女性に返すため」という理由で二千万円の借金をしたこともあるのだ。ある人物とは、尾崎豊の死の直前に会っていたとして話題になった、渋谷区でエステティックサロンなどを経営する岸田真介氏だ。

羽賀研二「金と女」巨大伝説を徹底解明 『週刊朝日』Part2

アンナとの交際が発覚したのが今年七月。その後、何人もの女性が羽賀との「過去」を暴露した。追い撃ちをかけるように父・梅宮が、「結婚は絶対に許さない。橋が腐って落ちそうになっていたら、渡るなというのは、親として当然でしょう」

と発言したものだから、それこそワイドショーの恰好のネタになり、羽賀が連日「誠意、誠意」と連呼する姿がテレビを通じて伝えられた。羽賀と親しい芸能レポーターもいう。

「梅宮さんが心配するのも当然でしょう。研二には親しい男友達がいないんです。それというのも、友達の彼女にま『あんなやつとより、僕と付き合ったほうが君のためになる』といって口説くんですから。研二の『女好き』は結婚してもなおりませんね」

だらしがないのは、女関係だけではなかった。もうひとつハッキリしないのが、羽賀の借金問題である。表に出ているだけでも等々力の自宅を抵当にした大手都市銀行からの極度額一億七千万円の債務がある。羽賀は、自宅以外に故郷の沖縄県宜野湾市の宅地や北谷町に宅地やビルを持っているが、これらの不動産も、銀行、ノンバンク、個人から合計二億五千三百四十万円(極度額)の借入の担保になっている。これだけで、すでに四億円以上の借金になるが、ほかにもまだあるようである。羽賀を知る芸能プロダクションの社長はいう。

羽賀研二「金と女」巨大伝説を徹底解明 『週刊朝日』Part1


その家は、目黒通りと環八が交差する東京・世田谷区等々力の高級住宅街にある。お屋敷が建ち並ぶ坂道の途中のこじんまりした瀟洒な二階建て。この家の持主は「當眞美喜男」、今年の芸能マスコミの話題を独占した「誠意君」こと羽賀研二(三三)だ。

それまで住んでいた大田区田園調布の借家から、昨年十一月この家を買って移り住んだ。敷地は百三十三平方㍍、建物は地下駐車場を含めて延べ百六十平方㍍。決して大きな家ではないが、地価が落ち着いたいまでも一億円はくだらない、といわれている。羽賀は大型のベンツ600SELを乗り回している。帰宅するとリモートコントロールで駐車場の扉が開き、ベンツがすべり込む。羽賀はさらにもう一台、イタリアのスポーツカー・フェラーリ412を持っていた。正規に購入すれば二千万円もするとわれる高級車だ。

「佐川清と笹川良一」細川別邸の密談が生んだ〝利益〟『FRIDAY』


豪華な日本間の一室で、何やら盛んに弁舌をふるっている笹川良一日本船舶振興会会長と、やや上目遣いでその表情をうかがう佐川清佐川急便会長。その横には、一見して芸者と分かる女性が侍っている---。

“ドン”という呼び名がふさわしい二人の密接な関係は、これまでも様々に噂されてきたが、プライベートな場で同席する「現場」が公になるのは、もちろんこれが初めてだ。二人の「密談写真」が撮影されたのは、昭和56年春。場所は、細川護熈前首相が佐川急便に貸りて、要人接待などに使っていた京都市左京区にある通称「細川別邸」である。この場にいた振興会関係者が言う。

佐川と笹川を結ぶビデオ『週刊朝日』Part3

トラック運転手の過酷な労働条件や不当解雇など、国会で佐川急便問題が追及され始めるのは一九八六年のこと。実は、それより前にこんなことがあった。笹川良一氏の側近だった人物が言う。

「これは良一会長から直接聞いた話です。八十年ごろ、東京佐川の渡辺社長から、『国会で佐川の労働問題が取り上げられそうなので、何とかならないか』という相談があったのです。そこで、良一会長が大物運輸族の政治家に働きかけたようです」

良一氏がどう動いたのかは不明だが、少なくともその時期は、佐川に対する国会質問がなかったという。

「その後、佐川清会長が『お世話になった笹川先生にお礼がしたい』と言い出したんです。良一会長は、『そんなものはイラン』と断ったのですが、『では先生の活動記録を撮らせて下さい』ということで話が決まったようです」(笹川良一会長に近い人物)

佐川と笹川を結ぶビデオ『週刊朝日』Part2

あるビデオは、まず画面いっぱいに「世界一家」「人類兄弟」の文字が現れた後、押し寄せる荒波が映り、背広姿の笹川良一氏がセカセカと歩いてくるところから始まる。そして「○月×日××記念式典」というテロップとともに、良一氏が壇上にあがって喋ったり、何やら表彰されたりというシーンが延々と続くのだ。国連に招かれた場面もあれば、良一氏がアフリカの子供と握手するシーンもある。式典に参加した細川護熈元首相や、良一氏の内縁の妻である鎮江夫人も登場する、といった具合だ。一本のテープに、こんな映像だけが二十五分も収録されている。早い話、良一氏の行動を追っただけの何の変哲もないPRビデオである。

このテープのパッケージには、「TVC」という文字が印刷してあった。「TVC」──正確には「東京ビジュアルコミュニケーション山本」というこの映像製作会社こそ、笹川氏と佐川氏を結び付ける接点なのだ。社長は作曲家の山本丈晴氏で、女優の山本富士子さんの夫である。山本社長は、「古賀政男音楽文化振興財団」の理事長でもある。この財団は、「日本音楽著作権協会」から、七十七億円の無利子融資を受け、作曲家の小林亜星氏らが批判して問題になったところだ。

佐川と笹川を結ぶビデオ『週刊朝日』Part1


今から三年前、京都市左京区にある佐川清・佐川急便会長の豪邸を訪れたときのことだ。通された部屋に、日本船舶振興会の笹川良一会長と佐川清氏が並んだ写真が誇らしげに飾ってあった。佐川氏は、「笹川先生を尊敬している」と繰り返し語った。

ほどなく政治家や暴力団関係者への巨額のバラまきが明るみに出て、大型経済事件の主役となった「佐川急便」。そして、いま警視庁が大動員をかけて捜査している「日本船舶振興会」。一見、何の関わりもなさそうに見える両者には、どんな接点があるのか。そして、佐川清氏は、なぜ良一氏を「笹川先生」と呼んだのか。

笹川錬金術の「密約メモ」発見『週刊朝日』(囲み記事)

運輸省幹部十一人が、チャーターしたベンツやハイヤーに分乗して、笹川陽平氏の別荘へ一泊二日のゴルフ旅行をした───船舶振興会と運輸省との、信じられないような癒着ぶりが問題化している。

「毎年お盆をはさんだ二週間ほど、陽平さんは川口湖畔の別荘に引き籠もるんです。そこへ、官僚はもちろん、橋本龍太郎氏、鹿野道彦氏、森喜朗氏といった政治家連中を招待しては、ホテル海洋のコックや寿司職人をかり出して、大歓迎するわけです」(振興会関係者)

もっとも、この程度の饗応じゃなかったことが、楢崎弥之助氏の調査で分かった。

今度は、運輸官僚への「料亭攻勢」である。陽平氏やその側近が、頻繁に運輸官僚を接待していたという料亭を、高級な順に並べると───

笹川錬金術の「密約メモ」発見『週刊朝日』Part3

このメモの所有者を追ううちに、国会で「笹川疑惑」を追及している衆議院議員の楢崎弥之助氏にたどり着いた。楢崎氏は、メモを持っていることだけは認めた。だが、

「持っているが、コピーはもちろん、中身を見せるわけにもいかない。事前に公になると、証拠湮滅の可能性があるからな。これは吉松の汚職事件に関することで、陽平氏は絶対に逃げられないだろう」

そして、こうも語った。

「七日の予算委員会の分科会で、笹川陽平を参考人招致する予定だ。笹川問題では、今まで色々な脅しがあった。中途半端だと、逆にやられるかも知れない。僕は昔から客観的な事実で追及してきた。今度も、独自調査と具体的な資料でやるつもりだ」

こう言われると、余計にメモの中身が知りたくなる。メモの発見を諦めかけたころ、「笹川家に近い業界関係者」を名乗る人物から、「見せるだけなら構わない」という連絡が入った。都内にある事務所の一室。ここで、「極秘メモ」の存在と中身を知ることが出来た。文書は二種類あった。B5判のレポート用紙に走り書きのメモが二枚と、同じくB5一枚の正式文書である。

笹川錬金術の「密約メモ」発見『週刊朝日』Part2

まずは、ブルネイ王国のプロジェクトからだ。住友建設に、「ブルネイのホテル建設」の要請があったのは、もう十二年も前、一九八二年七月のことだった。住友に、このプロジェクトを紹介したのは、他でもない笹川良一会長自身である。

「この計画は、ある仲介者から良一会長の元へ持ち込まれたものです。会長なら、難なく日本のゼネコンを動かせると見込まれたんでしょう。およそ百三十五億円ものプロジェクトですから、会長は一も二もなく飛びついて、陽平さんと一緒に現地に視察にでかけたぐらいです」(笹川良一氏に近い人物)

もちろん、住友建設にとっても良い話だ。要請から一ケ月後の八月二十日には、早くも建設工事の請負契約を取り交わした。しかし、「オイシイ話」は綻び始めるのも早かった。住友建設の関係者が、当時の状況を振り返る。

「どうも工事を発注した王族が下っ端に過ぎなくて、『立派なホテルなど身分不相応』とかで、王様の御機嫌を損ねてしまったらしいのです。それで、ブルネイからの工事代金の支払いが、不履行になってしまったんです」

笹川錬金術の「密約メモ」発見『週刊朝日』Part1


いま、日本船舶振興会内部には「三つの噂」が飛び交っている。ある振興会関係者が声をひそめてこう話す。

「一つ目は『次は誰が逮捕されるのか』、もう一つが『笹川陽平理事長が退任するかも知れない』という噂。最後が、『あの極秘メモが実在したらしい』というものです」

一つ目の噂については、前事務局長の吉松昌彦容疑者を逮捕した後も、警視庁が百数十人もの捜査員を動員していることを考れば、話題になるのは当然だ。二つ目の「陽平理事長退任説」も、

「どうも、野村證券の田淵節也元会長に頼んで、めぼしい大物財界人を物色してるようです。というのも、このまま笹川ファミリーの影響力が削がれると、振興会が運輸省OBの天下り機関として牛耳られることは目に見えてますからね」(笹川系財団幹部)

船舶振興会幹部逮捕で次の標的は?『週刊朝日』


「これは単なる始まりに過ぎない。調べれば調べるほど、不透明なカネの実態が明らかになるでしょう。その時は、もっと上の人間が捜査の対象になるかも知れません」

五月二十七日午後二時過ぎ、東京都港区虎の門にある「日本船舶振興会」(笹川良一会長)へ警視庁二課の係員約五十人が家宅捜索に入るのを見た振興会関係者は、こうつぶやいた。

今回逮捕されたのは、日本船舶振興会の常勤嘱託(理事待遇)吉松昌彦前事務局長と、小畠克明飛島建設東京支店現場所長、さらに平山文男三橋設計事務所参事の三人。

逮捕容疑は、モーターボート競走法違反にあたる贈収賄で、小畠、平山の両容疑者が、一九九一年の船舶振興ビル改修工事受注の見返りに、クーラーや冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、炊飯器などの百数十万円相当の電気製品を吉松容疑者の自宅へ贈ったというのだ。

数千万円の現金が知事や市長にバラまかれた一連のゼネコン汚職に比べたら、なんともセコイ事件である。それだけに、冒頭の「もっと上の人間」という言葉が現実味を帯びてくるのだ。

運輸省から船舶振興会補助団体へ大挙119人の天下り『週刊朝日』Part2


さらに、五十六団体に対する船舶振興会からの交付金を調べると、九十二年度が計六十一億千九百万円、九十三年度は計八十億三千九百万円、九十四年度は計八十六億千三十万円と、年をかさねるごとに増えている。また、天下り人数は、理事や役員だけで、非常勤の理事や顧問などはリストに加えていない団体もあった。実数はもっと多い。この資料をみた造船業界関係者は、

「これじゃ、運輸省OBの十分の一が笹川サンに食わせて貰ってるのと同じだよ」

と呆れ返るのだ。 競艇を開催するモーターボート競走会は、全国に十九団体あり、この競走会を傘下に収めているのが全国モーターボート競走会連合会である。一年で約二兆円が競艇で稼ぎ出され、その三・三%にあたる約六百六十億円が日本船舶振興会に入ってくる。このカネが、振興会を経由して、海運・造船関連団体や文化・福祉関連団体に配られる。莫大な資金を目当てに、政界・官界はもちろん、海外からも、こぞって要人が頭を下げにやってくるのは、あまりにも有名だ。

運輸省から船舶振興会補助団体へ大挙119人の天下り『週刊朝日』Part1


「日本船舶振興会の問題が、これまで国会の場で取り上げられなかったのは、笹川が恐ろしいからじゃ。だれか勇気のあるヤツが先鞭を付けにゃナラン。その点、私は圧力団体との対立で、なんども修羅場をくぐっとるからな」

五月十九日、国会で「笹川疑惑徹底追及の記者会見をした後、社会党の小森龍邦代議士は厳しい表情で語った。「追及の会」には社会党だけで十人以上が賛同しているという。だが、会見に出たのは三人だけだった。「相手が相手だけに身の安全を考えてやらにゃイカン。家族に危害が加わることがあるかも知れん。コトは慎重に運ぶ必要があるんだな」

会見の席上、小森氏らが配った資料には、今後追及する「笹川問題」ついて次のように書かれている。

1 運輸官僚との関係における問題
2 交付金、補助・助成金などのシステムの問題
3 政治家がらみ=補助金交付をめぐって、なお法整備の放置の問題
4 佐川と笹川の関連問題

その具体的内容は、まだ伏せられているが、

「充分に追求できるだけの資料はそろってる。理屈じゃなくて具体的な事実で追い詰めていくつもりじゃよ」

16億円の楽器を買う笹川財団の女性大物画商『週刊朝日』Part3

この金額を楽器輸入業者にぶつけてみると、

「十六億九千万円という価格は、いかにも安い。二十億円~三十億円出してもおかしくない。さすがは塩見さんの手腕だと言わざるを得ない」

という答えが返ってきた。さらに続けて、

「実は、音楽財団が高額の楽器を購入しようとする動きは二年ぐらい前からあったんです。それで、多くの業者がアプローチしたんですが、どれも具体化するには至らなかった。ところが塩見さんが来た途端、半年足らずで、こんな名器を安く買えるんですからたいしたもんですよ」

こんな高価な楽器を買うことのどこが「音楽振興」になるのか。それについては、財団の幹部の一人が自信たっぷりに説明する。

「日本の若い音楽家の育成のために楽器の貸与事業をやるのですよ。今回の買収はとっかかりに過ぎず、今後さらに世界の名器を集めていくことになるでしょう。あくまで長期的な視野に立った事業なんですよ。もとが博打のテラ銭といっても、いい使い方をすれば評価されると思う」

16億円の楽器を買う笹川財団の女性大物画商『週刊朝日』Part2

ビジネスの上で彼女の存在をもっとも煙たがったのは、市場を荒らされ兼ねない画商たちだった。

「だいたい、絵画や骨董品を見る目もない人間が、突然オークションだなんて言い出しても、お客さんは信用しやしませんよ」(銀座の画商)

だが、こんな画商連中のやっかみを尻目に、八九年に帝国ホテルで開いた日本で初めてのオークションでは十二億四千万円の売上を記録するなど、彼女は次々と成功を収めていったのだ。

「塩見氏の功績は、当時まだ概念すら浸透していなかった日本に、オークションを定着させたことでしょう。日本のオークションの歴史を語るのに欠かせない人物です」(サザビーズジャパン・広報担当藤井祥子さん)

サザビーズ時代の塩見さんの活躍は順風満帆だった。

「国内でもおおいに話題になった、大昭和製紙の斎藤了英氏が落札した、ルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』の商談の先頭に立ったのが塩見女史でした。業界にとっても一番いい時期だったですね」

16億円の楽器を買う笹川財団の女性大物画商『週刊朝日』Part1


一九九二年三月。美術業界では著名なオークション会社の女性社長が突然退任し、表舞台からこつ然と姿を消してしまった。このことが、画商たちの間で話題になっていたことは言うまでもない。

「その彼女が、今度は財団法人の専務理事になって、音楽業界に殴り込みをかけるってんいうんですよ。まさに、彼女らしい再登場じゃないですか」(銀座の画廊経営者)

この女性とは、世界最大のオークション会社サザビーズの初代駐日代表で、サザビーズ・ジャパンの社長だった塩見和子氏だ。その彼女が約二年間の沈黙を破って、昨年九月、『日本国民音楽振興財団(近く日本音楽財団に変更予定)』という財団法人の専務理事に就任したのである。

この財団法人は、東京都港区の船舶振興会ビルの一室にあって、運営資金は全て日本船舶振興会からの助成金だ。つまり競艇のテラ銭でまかなわれている船舶振興会系の笹川ファミリー財団なのだ。なぜ、サザビーズの元社長が音楽財団の理事に就任したのか───。船舶振興会の関係者が言う。

日債銀「破綻判定リスト」の衝撃 Part5 『文藝春秋』

リップルウッドが望んだのは、ロスシェアリング方式だった。

この方式ならモラルハザードを招く心配は少ない。それが、なぜ瑕疵担保になったのか。実は、金融再生法にはロスシェアリングを使えるという条文がなかったのだ。これについては、昨年七月九日の国会で、当時の柳沢伯夫金融再生委員長がこう答弁している。

「この法律におきましては、再生委員会による資産判定ということに依拠するという制度で、ロスシェアリングというスキームを採用されなかったと、むしろ反対解釈をすべきであろう、このように考えております・・・」

つまり、厳しい資産判定をするからロスシェアは必要ないと言っているのだ。しかし、既に述べた通り、再生委が判定した適資産には大量の問題債権が含まれている。国会答弁と現実が一致しない。実は、国会答弁を聞いて、先の安斎元頭取ですらクビを捻ったという。

「ロスシェアを結ばなければ、買収先が納得するはずがない。そごうのような企業も承継させることや、一回目の資産判定で速やかに売却することではお互いの意見が一致していましたが、この部分だけは私と考え方が異なりました。この時点では、『柳沢さんは本当に売却する気があるのか』とさえ、思ったほどです」

日債銀「破綻判定リスト」の衝撃 Part4 『文藝春秋』

再生委が、問題債権を無理矢理に「適資産」と判定せざるを得なかったのは、先の「奉加帳増資」に代表される、「先送り政策」が最大の元凶である。

九八年当時の経済状況を考えて甘い査定をしたのだから、単に「資産算定が甘い」という批判は当たらない。だが、金融再生委員会の「当時は止むを得なかった」という言い訳が、いつまで通用するのだろう。問題を先送りし、目をつぶって「危ない企業」の債権を新銀行に残したツケは必ず回ってくる。

その典型が、そごうの破綻である。

国有化当時の長銀の頭取、安斎隆が振り返る。

「そごうは、最初の債務者区分では要注意Aでした。これは、直近の決算が黒字だったからです。要注意Aであれば、自動的に適資産となります。ところが譲渡の時点では破綻懸念先となったのです。しかし、その段階から資産判定をやり直すと、譲渡は数ヶ月先になってしまいます。そこで貸倒れ引当金を積み増しして、譲渡されたわけです。私の考えでは、いずれそごうは破綻する運命だったと思います」

日債銀「破綻判定リスト」の衝撃 Part3 『文藝春秋』

こうして政治銘柄として生まれた日債銀は、再び政治の思惑の中で、破綻・国有化された。だが、ソフトバンク連合への譲渡によって、全ての矛盾が解消され、日本の金融システムが正常に機能すると言えるのだろうか。

一ヶ月の譲渡延期が決定した直後、再生委が作成したと思われる、ある内部資料が流出した。いわゆる「日債銀の資産判定リスト」である。実は、このリストを詳細に分析することで、日債銀売却の蔭に隠された、驚くべき事実を垣間見ることが出きる。

まず、このリストの真贋について再生委の意見を聞こう。

「様式からしまして、確かに資産判定資料らしきものに見えますけど、この判定資料が本物か、本物でないかについては何とも言いようがないですね。(資料について)報じられていることについては、私どもは否定も肯定もしていません。特に調査ということもやっていません」(再生委事務局・八田斎金融危機管理課長)

日債銀「破綻判定リスト」の衝撃 Part2 『文藝春秋』

「昭和四十年代までは、実際に担保の不動産を鑑定部が全部見て回りました。ところが、昭和五十年代に入ると、鑑定部に回さないで営業担当者が評価できるようになったのです。営業の力が強くなって、バブル時代になると、金利分まで上乗せして貸すような評価になっていきました。どうしてそうなったのか。やはり勝田さんが営業の現場をまったく知らなかったからでしょう」(前出・日債銀の元幹部)

東北の政商こと小針歴ニの福島交通グループへの巨額融資や、政財界の黒幕・児玉誉士夫と関係を深めたり、竹下登、金丸信、安倍晋太郎といった大物代議士への献金など、日債銀が〝政治銘柄〟になっていくのも、この時期だったという。

さらに、勝田の右腕といわれ、バブル期に頭取、会長として実権を握っていた、日本興業銀行出身の頴川史郎が、日債銀の野放図な融資に拍車をかけた。

「倒産した千代田ファイナンス(後の日本トータルファイナンス)は、バブル期に二、三十億円の経常利益を出した。すると頴川さんは、『この会社を見習え』と行内にハッパをかけたのです」(日債銀の元幹部)

日債銀「破綻判定リスト」の衝撃 Part1 『文藝春秋』

「日債銀の譲渡が終わり、〝三年間リスクを負わない大銀行〟が、新生銀行に続いて日本に二つ誕生したことになる。国民の税金で債権の劣化を保証され、おまけに貸し倒れ引当金まで国が面倒をみた。今後、続出するゼネコンの債権放棄でも、他の銀行が債権を買い取ってくれるのですから、小学校のドッチボールでボールが当たっても大丈夫な〝味噌っカス〟も同然です」(都市銀行の幹部行員)

この稿が掲載される時点で、かつて「政界の貯金箱」と呼ばれた「日本債券信用銀行」は、ソフトバンク傘下の「新生日債銀」に生まれ変わっている。平成十年十二月の国有化(特別公的管理)から、実に二十一ヶ月もの歳月を費やし、難産の末に出来あがったのは、内外のマスメディアから、「ソフトバンクの機関銀行」を危惧される代物だった。

新生銀行会長 八城政基は勝ったのか Part4 『文藝春秋』

手数料無料、二十四時間ATMサービスなどで預金者を集めるリテール部門。八城は、エッソ、シティバンク時代からのノウハウを生かして、顧客が満足するサービスのアイディアを出してきた。日比谷の新生銀行本店を「牢獄のようだ」と言い、コーヒーでも出せるようにと提案したのも八城である。新生銀行は専門紙・誌の顧客満足度調査では、常に上位に入るようになった。

そして、もう一つの顔は、債券投資や不動産の証券化、M&Aの仲介などの投資銀行部門である。新生銀行は、すでに非金利収入が五割を超えた。一見、利ザヤ稼ぎに頼る収益構造からの脱皮が成功したように見える。しかし「非金利収入」の大部分は不動産投資や債券売買などの直接投資のリターンである。投資銀行業務で、ゴールドマン・サックスなどの外資系、野村證券などと伍して戦うには、新規株式公開や社債の引き受け、そして企業買収の仲介のアドバイザリーフィーを稼ぎ出さなければならない。新生銀行における非金利収入は、本質的な意味では「手数料収入」となっていない。

ある外資系投資銀行の幹部からは、「新生銀行は普通預金付のヘッジファンドになった」という声が聞こえてくる。新生銀行には、外資系で債券や不動産の売買を手掛けたプロフェッショナルたちが多数スカウトされている。これらの数名の「招致部隊」が、ノンリコースローン、クレジット・トレーディングなどで数十億円単位を稼ぎ出しているだけだ。そして、昨年末、こうした招致部隊が耳を疑う人事が発表された。その人事とは、新生銀行次期社長に、ティエリー・ポルテ副会長の就任が内定したことだ。

新生銀行会長 八城政基は勝ったのか Part3 『文藝春秋』

話を冒頭に戻す。ファーストクラスでリップルウッドのティモシー・コリンズと出会った八城は、「リップルウッドのパートナーになって下さい」という頼みを、「サンキュー・バット・ノーサンキュー」と言って断った。コリンズは諦めず、翌日の食事に誘う。二人は、ホテル・オークラの和食レストラン『山里』で会食した。八城は投資ファンドというビジネスは面白いと感じたが、今さら働く気にはなれず、今度は手紙を書いて正式に辞退した。ところがコリンズは、「三菱商事の槇原稔会長が会いたいと言ってます。会って下さい」と言ってきた。

「槇原さんが会いたいというのを断るのは失礼ですからね。会って色々とお話ししたんです。すると、『八城さん、お願いしますよ。これは難しい仕事だけど、なかなか人がいないから、八城さんだったらできるからやってくださいよ』とまで言われたんです。それで、引き受けることにしたわけです」

八城は、シティバンクから中村彰利(現・産業再生機構常務)と奥村友紀子の二人の部下を引き連れて、リップルウッドのチェアマンとなった。二人は、リップルウッドのマネージング・ディレクターに就任し、宮崎県のリゾート施設、シーガイヤの買収、再建に当たることになる。もっとも、この時点では長銀の買収は決まっていなかった。八城は日本企業の再建ファンドのパートナーに就任することは決まったが、コリンズから、元ゴールドマン・サックスのパートナー、クリス・フラワーズと組んで、「銀行の買収を進めている」と打ち明けられる。

レイク買収は新生銀行か?アコムか?

消費者金融「レイク」売却先、新生銀有力に・GE子会社(日経2008年5月22日)
レイク買収、アコムが有力に(産経2008年5月7日)

GEコンシューマーファイナンスが保有する「レイク」の売却は、昨年夏に決定していた。九月に一回目の入札が行われたが参加者が無く、延期に次ぐ延期を重ねた。今年に入ってから、「五月中になんとかしたい」というGE幹部の意向で、各社に事業計画を提出させた。数千億円規模の巨額買収になることと、今後の消費者金融ビジネスの行く末や業界地図を塗り替えるディールなので、情報戦も激しいようだ。金融筋などから得た情報によると、それぞれの入札金額は、レイクの約6000億円の債権に対して、「プロミスが2500億円」「アコムが3000億円」「新生銀行が4000億円」という数字である。

すでに拡大戦略による規模のメリットで生き残りを選択しているプロミスの2500億円は「妥当なプライス」で、コストカットなどの事業再編を織り込んだアコムの3000億円が「ギリギリのプライス」、新生銀行の4000億円は「馬鹿げたプライス」という評価である。買収資金のすべてをキャッシュで出すことはないだろうが、現在の新生銀行が4000億円を支出するのはあまりに無謀ではないか。既に一兆円規模のリスクアセットを抱えている中規模コマーシャルバンクとして、正しい決断と言えるだろうか・・・。

新生銀行会長 八城政基は勝ったのか Part2 『文藝春秋』

日本のエッソ石油の成功を買われた八城は、昭和四十七年にエクソン本社のケン・ジェイミソン会長の特別補佐、エッソ石油社長、さらに、昭和五十四年にはアジア・太平洋地域を統括するエッソ・イースタンの副社長となって渡米する。エッソ・イースタンは、従業員約三万人、年間税引き後利益は約十億ドル。八城はイースタンのナンバーツーとして第二次オイルショックの最中、世界各国の原油の割り当てを決定する会議に参加する。さらにインドネシアの国営石油公社のプルタミナとの交渉や、タイのウドンでの原油開発の調査、パキスタンでの天然ガス利権の買収など、米石油メジャーの中心で活躍しはじめる。

しかし、エッソ・イースタンのトップの座を目の前にして、八城の前に「国籍」の壁が立ちはだかった。八城がエクソンの役員になれば、非米国籍の人間が米国のエネルギー戦略、ひいては国家機密へのアクセスが可能になる。そこでエクソンはグリーンカード(永住権)の取得を勧めたが、八城は拒否した。

「当時、日本の経営が世界一であるように言われるようになって、日本との関係が良くなかった。仮に僕がエッソ・イースタンの社長になっても、エクソンのボードメンバーに日本人を入れることには株主からの反対が予想された。そして決定的だったのは、僕がダウンストリーム(販売)だからです。本社のアップストリーム(開発)出身の人から見れば、『彼は売り子出身だ』という風になる。エクソンは、そもそも炭鉱や原油生産をやってきた会社ですからね」

新生銀行会長 八城政基は勝ったのか Part1 『文藝春秋』


平成十年九月。八城政基は、全日空のファーストクラス「1-A」シートに身を沈め、ニューヨークから成田に向かう機中の人となっていた。

八城は、社外重役をつとめるコンサルタント会社「アーサー・D・リトル」の取締役会に出席した帰路、東京に立ち寄り、そのまま「ロンドン・スクール・オブ・エコノミスト」の客員研究員として、孫のいるイギリスへ旅立つ予定だった。エッソ石油社長、シティバンク在日代表を歴任した八城だが、すでに「過去の経営者」となり、多くの日本人も彼の名前を忘れかけていた。

新生銀行 杉山淳二会長退任、八城政基会長復帰

数週間前から一部の金融筋で噂されていた人事が決まったようだ。杉山会長とともに旧三和銀行時代の部下数名の幹部も退社すると見られる。しかし、今更、代表権のない会長に八城が復活しても、この銀行が良くなるとも思えない。また、旧三和出身の幹部の退任は、ネガティブなニュースととらえるべきだろう。

新生は、サブプラ損失に加えて、傘下の消費者金融・ビジネスローン会社「アプラス」「シンキ」の再建が急務である。一部では「GE傘下のレイクを買収して規模のメリットを生かす」という見方もある。レイクについては、プロミス、アコム、新生の三社がビッドすると見られるが、仮に新生が買収しても、価格次第では逆に経営を圧迫しかねない。アプラスが持つ消費者金融ビジネスのノウハウは、プロミスやアコムと比較すると明らかに低い。プロミスやアコムの入札価格を大幅に上回る落札は、将来の禍根となる。

新生は、個人向けサービスに特化するのか、投資銀行業務を伸ばしていくのか、まったく方向性が見えない。日本のマーケットを理解出来ない外国人経営者ではなく、旧長銀の人間を経営中枢に据えるべきではないか。このままでは、投資ファンドのオモチャの状態が続くだろう。そして公的資金の返済はまったく見えてこない。

「サブプライム不安」で金融機関に出回る「危ない企業リスト」(週刊新潮 2008年5月15日号)

「『再編候補先リスト』と日本を覆いつくす『衆愚不況』」

本来、上記のようなタイトルが相応しい。そもそも、昨今の「官製不況」は、サブプラ危機とは直接関係がない。しかし、文章は筆者が書いても、タイトルは編集部がつけるので、文句を言っても変更する権限はない。

すべての週刊誌に言えることだが、「カレーライスです」と売りながら、「中身はハヤシライス」というスタイルは、もう改まらないのだろうか。カレーライスが食べたかった人の満足度が下がり、ハヤシライスが食べたい人にはリーチしないのでは、価値が下がるだけだと思うのだが・・・。

国際協力銀行「天下り40社リスト」Part2 『週刊文春』


「ボンタン・エルエヌジー・トレイン・エイチ投資」「ボンタン・トレイン・ジー・プロジェクトファイナンス」「プロジェクト・ファイナンス・ビーエルアールイー」の三社は、いずれもインドネシアのカリマンタン島のボンタン地区にあるLNG(液化天然ガス)の開発に関わる事業へ投資している。

別会社にして、それぞれ一人ずつ天下りを受け入れるより、一社が集約してプロジェクトを管理するほうが、JBICからの公的資金の支出が抑えられるのではないか。

この三社は、よほど仲が良いらしく、JR恵比寿駅に隣接する巨大なオフィスビル「恵比寿ネオナート」に揃って入居している。さらに、小誌の「迂回融資ではないか」という質問に対して、まったく同じ文章で回答してきた。まさに表裏一体の「ボンタン三兄弟」である。

国際協力銀行「天下り40社リスト」Part1 『週刊文春』


ここに一通の内部文書がある。政府系金融機関としてODA(政府開発援助)や円借款、輸出入金融などを行う特殊法人「国際協力銀行」(以下、JBIC)の元職員が、現在、勤めている企業名と肩書きを記したものだ。

OBたちの勤務先は、大手商社や大学教員など様々だが、その中に明らかに異質な企業群がある。「○×投資」「△□ファイナンス」という聞きなれない投資会社の役員や監査役に、なぜか数十名のOBが再就任しているのだ。

この投資会社の正体について、JBICの関係者が解説する。

「セレブ妻」バラバラ殺人事件について

4月28日、東京地裁で、夫の殺害と死体損壊・遺棄罪で起訴された三橋歌織の判決が言い渡される。2007年1月に発覚した事件は、歌織が、モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン社員の夫・祐輔を殺害し、死体を切断して捨てたというもの。裁判では歌織の責任能力の有無が争点になっているようだ。殺人事件そのものにはまったく興味がないが、この事件を巡る報道には、少々、疑問を抱いている。

実は、この事件の発覚当時、週刊誌やワイドショーの記者などが、私に取材にきていた。週刊誌でモルガン・スタンレーを記事にしていた人間がいなかったことと、モルスタの広報が何らの対応もしなかったためだ。問い合わせがあった記者には、次のように答えていた。

「モルガン・スタンレー・プロパティーズ(MSP)は投資銀行でもアセットマネジメント会社でもない。モルスタや傘下の不動産ファンド『MSREF(メズレフ)』が保有する不動産の管理・運営をしている会社である。取り扱い物件の数と規模、社員数などを考えれば、日本有数のプロパティマネジメント会社であり、能力・実績もトップクラスだ」

国際協力銀行は豪華施設で国費ムダづかい 『FRIDAY』


東京都新宿区市ヶ谷仲之町。陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地の近くで、車一台がようやくすれ違える狭い路地に「曙橋会館」という四階建てビルが建っている。付近を高級マンションなどに囲まれ、昼間はひっそりと静まっている。ところが、夕方七時を過ぎると、この会館は急に活気に満ちてくる。スーツ姿のビジネスマン風の男たちが連れだって会館に入り、時折、黒塗りのクラウンが門の中に消える。敷地内には数十台は駐車可能な広大な駐車場を備えている。

この「曙橋会館」の所有者は、特殊法人「国際協力銀行」(以下JBIC)である。JBICは、99年に特殊法人改革の一環として日本輸出入銀行と海外経済協力基金が合併して誕生した。この結果、JBICは、貿易会社やエネルギー開発を支える輸出入金融にくわえ、開発途上国への円借款や無償資金協力など約8000億円ものODAをも牛耳ることになり、貸出残高約20兆円という世界銀行に匹敵する巨大金融機関となった。そして、JBICが行う国際援助は、郵貯や簡保などの財政投融資と一般会計、つまり国民の税金が原資であることは言うまでもない。

金融庁のドン・五味廣文「異例の続投」の読み方 Part3 『Foresight』

ペイオフ解禁直後、竹中が金融庁に残した〝お目付け役〟の「金融問題タスクフォース」を解散させると、五味の〝暴走〟に歯止めをかけられる人間はいなくなった。昨年七月から今年六月にかけて発令した行政処分は、実に二百五十件。前年度の三倍近い数字に膨れ上がっている。

五味の戦略は巧妙だ。頻繁に長官室に新聞記者を招いて、日本酒を振舞って〝歓心〟を得る。そして、伊藤に変わって実力者の与謝野馨が金融相になると、「大臣への忠誠の儀式」が執り行われた。再び槍玉に挙げられたのは、日本郵政社長の西川である。

今年四月、金融庁は、融資先に「金利スワップ」という金融派生商品を販売したとして、三井住友に業務停止処分を下した。西川は国会で謝罪し、三井住友頭取時代の役員報酬の一部を返上させられた。三井住友の幹部が指摘する。

「なぜこのタイミングで、金利スワップ問題で業務停止命令なのか。この問題は、融資先から訴えられて、三年前から金融庁も知っていた。しかも、当時の金利スワップの責任者は、北山禎介頭取です。当時はお咎めなしで北山さんを頭取にしながら、今更、西川さんに謝罪させるのは、あまりにも意図的です」

金融庁のドン・五味廣文「異例の続投」の読み方 Part2 『Foresight』

五味が反転攻勢を仕掛けるのは、平成十四年に監督局長に就任してからだ。長官の最有力候補だった原口恒和総務企画局長が、柳沢金融相と対立して更迭。棚ボタ式に長官に就任した高木祥吉は、「事務処理能力は高いが単なるイエスマン」と言われ、五味は〝事実上の事務方ナンバーワン〟になる。

さらに小泉首相が柳沢を更迭し、竹中平蔵が金融相に就くと、金融庁は「銀行を検査で追い込む」という手法を駆使し始める。

手始めに、みずほフィナンシャルグループを二千百億円の黒字予想から二兆七千億円の赤字に転落させた。みずほは、一兆円の巨額増資を強いられた。さらに、UFJ銀行に対しては異例の八カ月間の長期検査で不良債権を炙り出す。検査の現場を仕切ったのは、目黒謙一統括検査官。目黒が、UFJに強制捜査並の検査が出来たのは、五味監督局長-佐藤検査局長のラインによる後ろ盾があったからである。

そして、平成十六年七月、五味は金融庁長官に就任し、名実ともに金融行政のトップに立つ。しかし、「国家権力」を背景に闇雲に権限を拡大するほど愚かではなかった。金監庁時代から政治に翻弄され続けた五味は、政治家を利用する手腕を身につけていた。

金融庁のドン・五味廣文「異例の続投」の読み方 Part1 『Foresight』



「市場を監督するためにやれることはやっている。分かってくれるのは家族だけだ」

今年一月、東京地検特捜部が証券取引法違反でライブドアを摘発すると、「法の抜け穴を把握せず監督責任を果たしていなかった」と、金融庁が批判の矢面に立たされた。この時、金融庁長官の五味廣文は、親しい記者との懇談(酒宴)の席で、いつものように日本酒を飲んで酔うと、冒頭のように呟き、溢れる涙をグッと手で拭い去ったという。

「UFJ銀行を葬った男」「行政処分を乱発する暴君」・・・。金融機関の幹部たちは「五味」の名前を口にする時、決まって仇敵を嫌悪するように表現する。その反面、五味を知る多くの新聞記者からは、「本音で話してくれる人間臭い官僚」と慕われている。

政府が座視する新生銀行「7年目の蹉跌」 Part2 『Foresight』

外人トップと現場との溝は日増しに広がっている。七月二十七日、小田原ヒルトンホテルで行われた「オフサイトミーティング」では、ポルテと日本人幹部との意識のズレは決定的となった。

「約三十人の本部長が出席する中で、M&Aの担当者が、『五千万円ぐらいのフィーが稼げる中規模ディールを手掛けたい』という方針を出したのです。するとポルテ社長が、『メガディールを狙え。そんなことではゴールドマンやモルスタに勝てない』と激昂したのです。新生には、GSのようなネットワークも資金調達能力もない。国内の中規模M&Aで実績を作るのが先決なのに、何も分かっていない」(新生幹部)

経営トップの力量の差は、そのまま新生銀行とあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)との差に表れている。

昨年六月、あおぞらは農林中金全共連アセットマネジメント前社長の能見公一を迎え入れた。能見は、専務理事時代に農林中央金庫を日本最大級の投資会社に変革した実績を買われ、水面下でゆうちょ銀行の社長候補となっていたが、あおぞらの株主の米サーベラス幹部が〝三顧の礼〟で横取りしたのだ。

政府が座視する新生銀行「7年目の蹉跌」 Part1 『Foresight』



「杉山会長が、佐藤隆文金融庁長官と密かに会談した・・」

八月初旬、新生銀行内部で「トップの密会を巡る情報が飛び交っていた。

新生の杉山淳二会長は、旧三和銀行時代、頭取就任を目前にしながらクーデターで信販会社の大信販(現アプラス)に飛ばされた後、新生がアプラスを買収して、再び銀行トップに返り咲いていた。企画畑一筋で出世した「財務省に顔が利く男」としても知られている。

新生は、今年三月期に発足以来初めて単年度赤字に転落し、六月末に業務改善命令を受け、さらに八月一日に政府保有の優先株が普通株に転換され、日本政府が筆頭株主になる〝異常事態〟を招いていた。

「杉山会長と金融当局首脳との話し合いで、経営危機に打開策が見つかるのではないか」

しかし、こうした新生幹部の期待は呆気なく裏切られた。杉山と佐藤の会見は、密会ではなく霞ヶ関の金融庁で行なわれたのだ。

小沢茂男(高島易断)と創価学会絵画疑惑の立花玲子



3月26日、経済産業省が、小沢茂男が代表をつとめる宗教法人「幸運乃光」に、「地獄に落ちる」などの不安を煽って仏具を販売したとして特定商取引法違反で3ヶ月の業務停止命令を出した。小沢は、豊田商事の営業マン出身で、88年に「高島易断総本部発真会」を率いる株式会社発心会の会長、翌年、宗教法人熊谷寺の代表役員に就任した人物。91年には所得隠しで2億円の追徴処分を受け、赤坂の桃源社ビルの占拠問題や、「財界二世学院」との手形騒動などにも顔を出していた。また、街角で托鉢を受けてる高島易断の僧侶もアジア系外国人の「アルバイト」だったことも問題化した。むろん発心会は、「高島暦」を作ったを高島嘉右衛門とは何の関係もない。

この小沢の名前は意外なところに登場する。

日本銀行総裁空白の元凶は福井俊彦

3月20日から日銀総裁ポストが空席となった。武藤敏郎副総裁(元財務次官)の就任を拒否した民主党の手法や、福田首相の力量不足を非難する声も少なくないが、今日の事態を招いた最大の元凶は福井俊彦と言わざるを得ない。

福井は、五年前にOBを含めた日銀関係者からの支援で奇跡的に総裁に就任したが、三年後に村上ファンドへの投資問題で躓いた。総裁在任中に村上ファンドへの投資を「解約」したことは明らかな「利殖行為」であり、当時、「日本銀行員の心得に反する」として辞任を迫った民主党の主張は正しい。しかし福井は、野党やメディア、世論から集中砲火を浴びるが、政府与党に守られて総裁の地位に留まり続けた。辞任を拒否した福井によって、日銀総裁の椅子は軽薄なものに成り下がり、政治の玩具になることが決定した。二年前に村上ファンド問題で追及の端緒を開いたのは民主党である。参議院で多数派となった以上、政権を揺さぶる材料に使うのは、むしろ当たり前の政治手法だろう。

「最後の切り札」福井日銀総裁の実力 Part2 『文藝春秋』

その後の福井は、大阪支店副支店長、総務局次長、人事局次長、調査統計局長を歴任する。「プリンス」として帝王学を叩き込まれ、三重野康から可愛がられた福井は、平成元年に理事に就任すると、三重野とともにバブル退治に乗り出す。同時に、「将来への布石」のため経済同友会の会員にもなる。

「三重野さんは、自分で音頭をとって産業界のトップと勉強会を開くことが好きでした。そういった席には、必ず福井さんも同席していた。日銀は、銀行界には顔は利くが、産業界との交流が少ない。いずれ総裁となる人は、朝食会や昼食会を通じて、大手企業のトップと直に話せる関係を作らなければならない。福井さんは、富士ゼロックスの小林陽太郎、トヨタの奥田碩、富士通の山本卓眞、新日鉄の今井敬といった財界人と友人関係を結ぶようになりました」(前出・日本銀行古参OB)

「最後の切り札」福井日銀総裁の実力 Part1 『文藝春秋』




銀行の銀行として、あるいは金利や物価を操る通貨の番人として、その権力や神秘性ゆえに、「法王庁」と呼ばれる日本銀行の玉座に、かつて〝プリンス〟と呼ばれた男・福井俊彦が総裁に就任してから一年がたった。

接待汚職で副総裁からの引責辞任を余儀なくされ、「過去の人」になりかけたが、ゼロ金利政策という異常事態の中で復活を果たした。三重野康以来の「日銀生え抜き総裁」の誕生に、日銀関係者は福井の活躍に期待をした。

しかし、一年目を過ぎた今、その評価は二分している。

一月二十日、日銀は当座預金の残高目標を三十~三十五兆円に引き上げた。これは、総裁就任以来、実に四回目の引き上げで、二人の審議委員が反対票を投じる中、議長である福井の提案によって、採決が行われたものだ。

福井日銀総裁は何を恐れているのか Part2 『Foresight』


福井が公開した個人金融資産は、預貯金が一億八千六百万円、株式が三千四百万円、投資信託が三千五百万円、国債が一千万円というもの。妻と合わせて金融資産だけで三億五千万円になる。「庶民感覚」では桁外れの資産額だが、そもそも中央銀行の総裁は庶民ではないし、庶民感覚で金融政策にあたる必要も無い。年間三千六百万円の総裁としての報酬は、職責の重さを考えれば安すぎるぐらいだ。保有している有価証券は、商船三井、富士通、キッコーマン、新日鉄、三井不動産などの社外取締役や顧問を務めていた優良企業ばかり。

福井日銀総裁は何を恐れているのか Part1 『Foresight』



今から五年前、村上世彰が率いる「M&Aコンサルティング」は、六本木ヒルズではなく、南麻布の雑居ビルの七階にひっそりと居を構えていた。白金や麻布の高級住宅街に囲まれていると言えば聞こえがいいが、陸の孤島のような場所である。平成十三年八月、オークウッドのパネルで飾られたこの事務所で、一時間半にわたって村上から「投資哲学」を聞いたことがある。

「投資先の東京スタイルは、保有不動産や有価証券を遊ばせて適切な投資をしていない」「昨年の昭栄に対する敵対的TOB(株式の公開買い付け)の失敗は、日本の経営者や証券市場が遅れているからだ」「株主価値の向上こそが、不況脱出につながる」・・。